独DAC技術が北米初上陸 カナダDeep Skyと提携し「高品質カーボンクレジット」創出へ

村山 大翔

村山 大翔

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カナダの炭素除去(CDR)プロジェクト開発大手であるディープ・スカイ(Deep Sky)と、ドイツのハンブルクに拠点を置くダクマ(DACMA GmbH)は12月1日、長期共同開発契約を締結したと発表した。この提携により、ダクマが保有する直接空気回収(DAC)技術が北米市場に初めて導入されることとなる。両社はまず年間600トンの二酸化炭素(CO2)除去能力を持つユニットの設置から着手し、2027年までの大規模化を通じて、ボランタリー(自発的)および規制市場向けに高品質な炭素クレジットを供給する計画だ。

年600トンから「メガトン級」への拡張ロードマップ

今回の合意に基づき、ディープ・スカイはダクマ製のDACユニットをカナダ国内の自社施設に配備する最初の事業者となる。初期導入されるユニットのCO2除去能力は年間600トン規模となる予定だが、これはあくまで実証段階の第一歩に過ぎない。

両社は、ディープ・スカイが計画している大規模な炭素除去・貯留ハブ施設への導入を見据え、次世代DACシステムの共同開発にも取り組む。ディープ・スカイは将来的に年間100万トン(メガトン)規模のCO2除去を目指しており、2027年を目処に大規模施設への展開を進める方針を示している。

規制環境の整備とクレジット市場への戦略

カナダでは、大規模なDAC開発を後押しする規制環境の整備が進んでおり、本提携はこの「好意的なDAC環境」を最大限に活用するものだ。

両社は、技術的なスケールアップだけでなく、生成される炭素除去クレジットの「質」にも注力する。検証可能性と永続性の高い「高潔性(High-Integrity)」を持ったクレジットを創出することで、まずはボランタリークレジット市場(VCM)での需要に応え、将来的にはコンプライアンス(規制)市場への参入も視野に入れている。

ディープ・スカイのCEO、アレックス・ピート(Alex Petre)氏は、この提携について次のように述べている。 「炭素除去インフラの規模拡大には、堅牢で画期的なエンジニアリングと、これまで以上に野心的な展開が必要です。ディープ・スカイとダクマが目指すのはまさにそれであり、DACのコストを押し下げ、可能な限り迅速に技術をスケールさせるために協働していきます」

また、ダクマのCEO、ヨルグ・スピッツナー(Jörg Spitzner)氏も以下のように期待を寄せた。 「ディープ・スカイとの強力なアライアンスを楽しみにしています。我々は、不可避な排出や過去の排出を地球の炭素循環から永久に除去し、気候変動を食い止めるためにCDRを急速に拡大するというビジョンとコミットメントを共有しています」

技術中立的な開発モデルと資金力

モントリオールを拠点とするディープ・スカイは、特定の技術に依存しない「技術中立(Tech-Agnostic)」なプロジェクト開発者として知られる。世界中の有望なDAC技術を選定し、それらを束ねて大規模なインフラを構築することで、ギガトン級の炭素除去を目指している。

同社はこれまでに、インベスティスマン・ケベック(Investissement Québec)やブライトスパーク・ベンチャーズ(Brightspark Ventures)などの投資家から1億3,000万ドル(約195億円)の資金を調達しており、今回のダクマとの提携も、その豊富な資金力を背景にしたポートフォリオ拡充の一環といえる。

一方のダクマは、南米やドイツですでに実績のあるモジュール式DACシステムを有しており、極端な気象条件への耐性とエネルギー効率の高さ、そして大規模商業施設への拡張性が評価されている。

参考:https://dacma.com/news/direct-air-capture-partnership-canada-deepsky-and-dacma/