「廃水処理におけるアルカリ性の強化」による世界初のカーボンクレジットを創出 既存インフラ活用でスケーラブルなCDRを実証

村山 大翔

村山 大翔

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CREW Carbonは、CDR技術として注目が高まる「WAE(廃水処理におけるアルカリ性の強化)」を通じた初のCDRクレジットを発行した。このクレジットは、厳格なプロトコルに基づきカーボンレジストリのIsometricにより検証されたもので、同社が締結する50億円規模のオフテイク契約に基づく初の供給となる。

米コネチカット州のクライメートテック企業CREW Carbonは、廃水処理施設を活用したCDR技術「WAE(廃水処理におけるアルカリ性の強化)によって生成された、初のCDRクレジットを正式に発行した。今回の発行は、Google、Shopify、Stripeなどが出資するカーボンリムーバルコンソーシアム「Frontier」との6年間3,210万ドルの契約に基づく初の成果であり、WAEの社会実装に向けた大きな一歩となる。

初回となる104.4クレジットは、イーストショア水質汚染防止施設に統合されたWAEシステムによって生成された。この施設は1日あたり4,000万ガロンの廃水を処理し、米国東海岸でも最大規模となるCDR施設へと拡張が予定されている。

WAE技術は、石灰岩などの安価で可溶性のアルカリ鉱物を廃水処理工程に投入し、大気中のCO2を重炭酸イオンとして海洋へ安全に拡散させる仕組み。これにより、CO2は数千年間安定的に貯留され、大気への再放出を防ぐという。

Isometricによる新プロトコルに準拠したCDRクレジットの発行は、炭素市場における信頼性の向上を意味する。今回のプロトコルでは、発行クレジット1トンあたりCO2が実際に除去されていることが厳密に追跡・検証される仕組みとなっており、CDRマーケットの透明性と成長の加速に貢献する。

CREW CarbonのWAE技術は、3か月でプロジェクトを初期評価から本格展開まで移行可能な構造を持ち、既存インフラや許認可を活用できる点でもコスト効率とスケーラビリティが評価されている。

CREW Carbonの共同創設者兼CEOのヨアヒム・カッチノフ博士は「廃水処理場は、地域コミュニティへの重要なサービス拠点であると同時に、炭素除去における非常に強力なプラットフォームでもあります。我々のWAE技術は、既存の施設を気候資産へと変貌させ、定量的かつ持続可能なCDRを実現します。これは”未来の話”ではなく、今まさに始まっていることなのです。」と語っている。

CREW Carbonは今後、米国東海岸を中心にWAE導入を進め、2030年までに7万トンを超えるCDRを目指す。また、他国の処理インフラへの適用可能性も視野に入れており、グローバルな拡張性を持つCDRソリューションとしての地位を確立しつつある。

参照:https://crewcarbon.com/crew-delivers-first-verified-wae-carbon-credits-to-frontier-buyers/