欧州の産業排出に新戦略 RepAirとC-Questraの提携で低濃度CO2の回収・貯留に挑む

村山 大翔

村山 大翔

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欧州の産業部門で排出される低濃度二酸化炭素(CO2)を回収・貯留する新たな枠組みが始動する。アムステルダム拠点のシークエストラ(C-Questra B.V.)とイスラエル発のレペア・カーボン(RepAir Carbon)は9月3日、既存のDAC(直接空気回収)の協力関係を拡大し、フランス、英国、ポーランドでの産業排出源からのCO2回収・貯留事業に乗り出すと発表した。

両社は、濃度0〜5%という従来技術では経済性が低いとされる排出源を対象にする。対象産業はアルミ精錬やガスタービン発電など、排出削減が困難なセクターで、CO2濃度が希薄な排出流を効率的に処理する必要がある。

レペアが開発した独自の電気化学的捕集技術は、従来法に比べてエネルギー消費を70%削減できるのが特長だ。熱源や液体溶剤を用いず、モジュール化された装置を産業現場に組み込むことで、排出者にとって導入コストを抑えつつ短期間での運用開始を可能にする。

シークエストラは欧州各地でオンショア型のCO2貯留拠点を段階的に整備中であり、今回の提携により、回収から永続貯留までを一体化した「エンド・ツー・エンド」のソリューションが形成される。これは欧州連合(EU)が導入する排出量取引制度(EU ETS)、炭素国境調整メカニズム(CBAM)、ネットゼロ産業法(NZIA)に準拠する産業部門にとって「バンカブル(融資可能)」な脱炭素手段になると期待される。

シークエストラの最高経営責任者(CEO)ワリド・シンノ氏は「欧州の産業界には、手頃で主権的なCO2貯留へのアクセスが急務だ」と強調した。レペアのCEOアミール・シャイナー氏も「DACで実証された技術の柔軟性を、産業の低濃度排出にも応用できる。今回の拡張により、削減と除去の両面をカバーし、捕集したCO2をすべて安全に地中に恒久貯留できる」と述べた。

アルミ精錬では世界で年間約3億トンのCO2が排出され、ガスタービン発電もAIやデータセンター需要の拡大に伴い排出削減が急務とされる。両社は今後、欧州の主要産業排出源のマッピングと優先順位付けを行い、パイロット事業を展開する計画だ。

この取り組みは、欧州の炭素管理における「主権確立」を掲げ、低炭素型産業経済への移行を加速する一手と位置づけられている。

参考:https://www.cquestra.com/press/