中国・EU・英国など11カ国が参加の「コンプライアンスカーボンクレジット市場オープンコアリション」正式発足 ETSの国際連携を推進

村山 大翔

村山 大翔

「中国・EU・英国など11カ国が参加の「コンプライアンスカーボンクレジット市場オープンコアリション」正式発足 ETSの国際連携を推進」のアイキャッチ画像

第30回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP30)の首脳級会合で、ブラジルが提案した「オープン・コアリション・オン・コンプライアンス・カーボン・マーケッツ(Open Coalition on Compliance Carbon Markets)」が正式に発足した。

加盟国はブラジル、中国、欧州連合(EU)、英国、カナダ、チリ、ドイツ、メキシコ、アルメニア、ザンビア、フランスの11カ国・地域。声明文は7日夜、ベレン気候サミットの公式プログラム内で発表され、新たな加盟国の追加にも開かれた形で運用が始まった。

コンプライアンスカーボンクレジット市場の「共通ルール」形成へ 主要排出国が合流

オープン・コアリションは、各国のコンプライアンスカーボンクレジット市場をつなぐ協調枠組みとして、カーボンプライシングや測定・報告・検証(MRV)システム、炭素会計、オフセットクレジットの活用ルールなどの標準化を進めることを目的とする。

ブラジル財務省のラファエル・ドゥブー執行次官は「世界主要経済との連携により、共通ルールと調和的な制度整備の道を築く歴史的な一歩だ」と述べ、「将来的には市場の相互運用性(インターオペラビリティ)の実現につながる」と強調した。

「脱炭素への明確な道筋」 化石燃料依存からの転換促す

同省の説明によると、この連携はCOP28で合意された「化石燃料依存の段階的・公正な削減」を具体化する枠組みとして位置づけられる。ドゥブー次官は、「各国が秩序立った形で脱炭素化へ進むことで、リスクを軽減し投資を促し、生産部門に明確な移行経路を示す」と語った。

また、ブラジル財務省のクリスチーナ・ヘイス炭素市場特別局長は、「参加国の多くは既に炭素税や排出量取引制度を導入しており、全体で世界排出量の約20%をカバーしている」と説明した。その上で、「市場・金融・技術・ガバナンスの各側面を統合することで、国際協調を強化し、気候野心の拡大に寄与する」と述べた。

国際協調の新たな象徴 EUや中国も主導的役割

今回の合意には、EUや中国といった既に成熟した炭素市場を持つ国々が名を連ね、制度の信頼性と国際整合性を高める狙いがある。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、COP30首脳級セッションで「カーボンプライシングは温室効果ガス削減と経済成長を両立させる中核的手段だ」と述べ、ブラジル主導の構想への支持を改めて表明した。

世界銀行によれば、2025年時点で50カ国以上が炭素価格制度を導入し、世界排出量の28%をカバーしている。今回の11カ国連合は、これらの制度の「共通基盤化」を図る初の政府間プラットフォームとなる見通しだ。

制度調和と市場接続が焦点に

オープン・コアリションは今後、制度運用の透明性向上と市場間接続の技術的基盤を協議する。11月15日にはブラジル議長国主催の閣僚級円卓会議が予定されており、加盟国による次段階の調整方針が発表される見込みである。

参考:https://cop30.br/en/news-about-cop30/belem-climate-summit-daily-brief-november-6