COP30で初の「炭素除去(CDR)パビリオン」設置 持続的CDR拡大へ国際連携加速

村山 大翔

村山 大翔

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国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)の議長国ブラジルは、11月10日から21日までベレンで開催される会議において、炭素除去(CDR)をテーマとする史上初の専用パビリオンを設置することを発表した。国際的なCDR連合「CDR30」が主導し、90を超える企業、研究機関、投資家、NGOが参画する。

この「CDR30パビリオン」は、排出削減と並行して不可欠な対策であるCDRを交渉の中心に位置づけ、科学者・政策決定者・投資家を結ぶ場となる。国連交渉の公式会場「ブルーゾーン」内に設置されることで、CDRの位置づけが国際外交の一段高いレベルに引き上げられる。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は「ネットゼロはCDRなしには達成できない」と強調している。世界全体では2050年までに年間70〜90億トンの持続的な除去が必要で、現在の水準(年間0.05億トン未満)から最大5,000倍に拡大する必要がある。2030年までに1億トン規模、2035年には数億トン規模へと成長させなければならず、早期の投資が不可欠とされる。

ネガティブ・エミッションズ・プラットフォーム(NEP)のクリス・シャーウッド事務局長は「COP30は炭素除去が世界の舞台に本格的に登場する瞬間だ。政府・投資家・市民社会が初めて専用の場でCDRを議論する」と述べた。

CDR技術は、土地・大気・海洋・岩石など多岐にわたる。ブラジルでは小規模農家が岩石風化促進やバイオ炭を活用し、アイスランドでは地熱を利用して大気中CO2を玄武岩層に永久貯留している。米国ではバイオマスを油に転換し地下に注入する事例もある。

国際バイオ炭イニシアチブのルイサ・マリン事務局長は「バイオ炭を政治の議題に押し上げる契機であり、科学的に裏付けられた解決策を政策決定者に届ける」と語った。

「CDR30パビリオン」は、毎日のイベントや技術実演、交渉ブリーフィングを通じて以下の役割を担う。

  • 科学と外交の拠点:最新技術の展示や専門家会合の開催
  • エコシステムの結節点:革新者・投資家・政策立案者を結集
  • 国際的シグナル:パリ協定達成に不可欠なCDRの地位を明確化

Isometricのルーカス・メイ最高商務責任者は「わずか1年前にバクーでの昼食会で浮上した構想が、いま現実になった。CDRコミュニティ全体の協調努力の成果だ」と振り返った。

各国政府は一部のCDR事業を支援し始めているが、科学的要請に見合うスピードには達していない。パリ協定第6条でCDRの位置づけを明確化し、国際的なカーボンクレジット市場への統合を進めることが不可欠だ。COP30は、試験段階にとどまるCDRを世界規模の展開へ移行させる「転換点」となることが期待される。

参考:https://biochar-international.org/news/carbon-removal-secures-historic-pavilion-at-cop30/