ブラジル政府および同国連邦貯蓄銀行(CAIXA)は2025年11月、ブラジル・パラー州ベレンで開催された国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)において、期間中に排出された二酸化炭素(CO2)13万トン全量をオフセットし、国連による公式認定を受けたと発表した。今回の措置には、国連のクリーン開発メカニズム(CDM)に基づく認証排出削減量(CER)が活用されており、運営に伴う環境負荷を完全に中和した「サステナブルなCOP」の実績が示された形だ。
CDMプロジェクト由来のクレジットを活用
今回発行された「自主的取消証明書(Voluntary Cancellation Certificate)」は、2025年11月12日付で国連により承認されたものである。
特筆すべきは、相殺に用いられたクレジットの出処である。今回のオフセットには、国連のCDMに登録されている「プロジェクト6573:CAIXA固形廃棄物管理および炭素ファイナンス・プロジェクト」から創出されたCER(認証排出削減量)13万トン分が充てられた。CDMは京都議定書に基づくメカニズムであり、ブラジル国内の廃棄物管理プロジェクトを通じて削減・回避された温室効果ガスが、国際会議のカーボンオフセットとして還流されたことになる。
このプロセスは、プログラムの調整機関であるCAIXAによって実施され、CDMレジストリの公式手順に則り、クレジットの追跡可能性と透明性が確保されている。
物流から空調まで、運営排出量を「過剰達成」でカバー
オフセットの対象範囲は、COP30の運営に関わる排出活動を網羅している。
- 対象範囲: 会場内の輸送、エネルギー使用、空調システム、物流、その他関連活動
- 検証方法: 排出量は監査済みのインベントリ(目録)によって算出
さらに、公式発表によると、イベントの排出量インベントリに対し、相殺量は100%を超過しているという。これは、運営側による措置に加え、参加者自身が自発的に行ったカーボンオフセットの貢献が含まれているためであり、結果として「カーボン・ニュートラル」以上の成果を達成した。
COP30特別長官のヴァルター・コレイア氏は、「13万トン以上のCO2を国連の国際認証を伴って相殺した事実は、ブラジルが気候危機の緊急性に見合い、かつ世界的なベストプラクティスに沿った会議を提供していることを証明するものだ」と述べ、アマゾンで開催された今回のCOPが具体的な行動を伴うものであることを強調した。
過去最大級の動員数が背景に
今回の13万トンという大規模なオフセットが必要となった背景には、アマゾン地域初開催となったCOPへの記録的な参加者数がある。
ブルーゾーン(交渉区域)とグリーンゾーン(市民社会・一般区域)を合わせた12日間の延べ入場者数は、51万3,848人に達した。特にブルーゾーンには195カ国から代表団が訪れ、1日平均1万8,270人が入場。11月11日のピーク時には2万3,006人を記録した。
市民社会や先住民族、民間セクターが集うグリーンゾーンも、11月21日に3万7,206人のピークを記録するなど、極めて高い関心を集めた。これら50万人規模の移動と滞在に伴う環境負荷を、透明性の高いCDMクレジットで処理したことは、今後の大規模国際イベントにおける環境配慮のベンチマークとなる可能性がある。
