サウジでDAC商用化へ加速 クライムワークスとRCJYが大型実証に向け合意

村山 大翔

村山 大翔

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スイスの炭素除去(CDR)大手であるクライムワークス(Climeworks)は2026年2月25日、サウジアラビアのジュベイル・ヤンブー王立委員会(RCJY:Royal Commission for Jubail and Yanbu)と、大気直接回収(DAC)技術の社会実装に向けた基本合意書(MOU)を締結した。サウジアラビア・エネルギー省の指導のもと、ジュベイル産業都市における実証プラントの建設と、将来的な商用規模への拡大を目指す。本提携により、中東における高品質なカーボンクレジット創出の基盤が一段と強固になる。

今回の合意は、2024年12月から開始されたアブドラ国王石油調査学習センター(KAPSARC:King Abdullah Petroleum Studies and Research Center)との共同フィジビリティスタディ(実現可能性調査)の進展を受けたものである。両者は今後、ジュベイルにおけるDAC実証プラントの次段階の評価を行い、低炭素な熱源およびエネルギー源の確保、適切な設置場所の特定、規制要件の調整を共同で進める。

クライムワークスは過去3ヶ月間、ジュベイル工業大学に移動式DAC試験施設を設置し、沿岸部特有の気候条件下でのデータ収集を実施してきた。これに先立ち、首都リヤドの乾燥した砂漠地帯でも試験を行っており、異なる気候環境下で技術の有効性が確認されている。これにより、サウジアラビア全土での大規模展開に向けた技術的信頼性が実証された形だ。

RCJYは1975年の設立以来、サウジアラビアの産業都市開発を牽引しており、2024年時点での管轄都市への総投資額は約1兆4,600億サウジ・リヤル(約58兆4,000億円)に達する。今回の提携は、サウジアラビアが掲げる「ビジョン2030」およびネットゼロ目標の達成に向けた、カーボンマネジメント戦略の中核をなすものである。

クライムワークスの次世代技術を活用することで、大規模なDAC施設のコスト削減経路も探る。これは、ボランタリーカーボン市場において、永続性の高いカーボンクレジットの供給価格を抑え、企業の需要を喚起する上で極めて重要な要素となる。クライムワークスの共同CEOであるクリストフ・ゲバルト(Christoph Gebald)氏は、「サウジアラビアでのDAC事業が、調査・試験段階からプロジェクト開発段階へと移行することを誇りに思う」と述べ、商用化への強い意欲を示した。

今後の焦点は、実証プラントからフルスケールの商用プラントへのスケールアップの速度だ。サウジアラビアの豊富な再生可能エネルギー資源と地政学的な優位性は、DACの運用コスト削減に寄与する。一方で、大規模なカーボンクレジット創出には、国際的な認定基準への適合や、回収したCO2の貯留・利用に関する法整備の迅速な進展が不可欠となる。

サウジアラビアの莫大な資本力とクライムワークスの先端技術が融合することで、高品質なカーボンクレジットの「量産化」が現実味を帯びてきた。日本企業にとっても、中東発のCDR由来カーボンクレジットは、将来的な供給源として無視できない存在になるだろう。特に、排出削減が困難なハード・トゥ・アベート産業において、長期的な調達戦略の構築が急務となる。

参考:https://climeworks.com/press-release/rcjy-climeworks-deepen-partnership-to-scale-dac-in-saudi-arabia