スイスの気候金融スタートアップであるクライムファイ(ClimeFi)は12月23日、8万5,000トンを超える二酸化炭素除去(CDR)の最新調達ラウンドを完了したと発表した。総額1,800万ドル(約28億800万円)に上る今回の調達は、平均価格213ドル(約3万3,200円)で実施され、バイオ炭や大気直接回収・貯留(DAC)など8つの異なる技術手法を網羅している。
同社は需要を一本化する「共同調達」モデルにより、断片化された市場において通常は困難な大口割引などの有利な取引条件を引き出すことに成功した。

今回の調達ラウンドは、過去6カ月間にわたり複数の企業バイヤーの需要を統合することで実行された。調達対象は、バイオ炭、炭素回収・貯留併用バイオエネルギー(BECCS)、大気直接回収・貯留(DAC)、強化風化(ERW)、微生物による炭素除去、鉱物化、陸域バイオマス貯留、廃水アルカリ度向上の8手法に及ぶ。契約された除去量の71%は南北アメリカ大陸のプロジェクトが占めており、4大陸にまたがる広範な供給網が構築された。
選定された供給企業には、アンデス(Andes)、ビオサーク(BioCirc)、カーボンニアーズ(Carboneers)、クルー・カーボン(CREW Carbon)、ディープ・スカイ(Deep Sky)、エクソマド・グリーン(Exomad Green)、グラフアイト(Graphyte)、インプラネット(InPlanet)、オー・シー・オー・テクノロジー(O.C.O. Technology)、ヴォールテッド・ディープ(Vaulted Deep)の10社が名を連ねている。各プロジェクトは2025年第3四半期に開始された提案依頼書(RFP)プロセスを経て、2026年から2030年の間に最低2万トンの供給能力を持つことが確認された。
納入のピークは2027年から2028年に予定されており、一部のオプション契約は2033年まで延長される見通しだ。クライムファイ(ClimeFi)の共同創業者であるセバスチャン・デワラット(Sebastien Dewarrat)氏は「先見の明を持つバイヤーと協力し、永続的な炭素除去の規模拡大に貢献できることを光栄に思う。今後数カ月以内に、具体的なバイヤーとプロジェクトの組み合わせを公表する予定だ」と述べた。同社は今後もクレジットの発行遅延や未納入などのリスクを管理するため、採択プロジェクトの継続的なモニタリングを実施する方針である。
今回のニュースは、黎明期にあるCDR市場が「実験的な試行」から「制度化された共同調達」へとフェーズが移行したことを象徴している。
特に注目すべきは、平均213ドル(約3万3,200円)という価格設定だ。高コストが課題とされるDACや鉱物化技術を含みながらこの価格を実現できたのは、安価なバイオ炭などと組み合わせた「ポートフォリオ型」の調達と、需要集約による交渉力の賜物と言える。
日本のカーボンクレジット市場においても、GXリーグの進展に伴い、高品質なクレジットへの需要が高まっている。しかし、一社単独で高品質かつ高単価なCDRを確保するのはリスクもコストも大きい。
クライムファイが示した「需要のプール化」は、日本の商社や金融機関が主導して国内企業の需要をまとめ、国際的な有力プロジェクトと直接交渉する際の有力なモデルケースになるだろう。
今後は2027年の納入開始に向けた各プロジェクトの実施状況が、市場の信頼性を占う次の試金石となる。
参考:https://www.climefi.com/blog-posts/climefi-announces-85-000-tonne-procurement-round


