「100年の永続性」見直しへ カーボンクレジットの基準再設計を開始

村山 大翔

村山 大翔

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北米の主要なカーボンクレジット認証機関であるクライメート・アクション・リザーブ(Climate Action Reserve)は3日、従来の「100年永続性」ルールを再検討する作業部会を立ち上げ、10月3日までの公開協議を開始すると発表した。大気中の二酸化炭素(CO2)の寿命を根拠にしてきた長期拘束の原則を見直し、科学の進展や市場ニーズに即した制度設計を目指す。

リザーブは創設から25年にわたり、CO2が大気に残存する100年間を基準に「プロジェクトも同期間炭素を固定しなければクレジットを認めない」と定義してきた。これに基づき、森林などのプロジェクトは100年のクレジット期間に加えてさらに100年、合計200年にわたる炭素固定の責任を負う契約を締結している。森林火災など不可避な逆転排出に備え、バッファープールも運用してきた。

しかし、最新の気候科学ではCO2の大気寿命を「数十年で約半分が消失する一方、残りは数世紀から数千年残存する」とする見解が主流になっている。これにより、永続性の定義をめぐって技術的除去(DACCSなど)の支持者は「数百〜数千年レベルの恒久性」を強調し、逆に自然由来吸収(植林や森林保全)の役割を過小評価する動きも見られる。リザーブは「自然解決策は即時かつ大規模に実行可能で不可欠」と強調しつつも、IPCCが示す科学的基準を下回る恒久性の緩和は避けるべきだと警鐘を鳴らした。

今回の見直しでは、

  • ①プロジェクトに求める恒久性の期間
  • ②モニタリング・報告・検証(MRV)の期間
  • ③逆転排出発生時の責任主体
  • ④リスク低減手法
  • ⑤補償メカニズム
  • ⑥義務履行確保の仕組み

といった論点が検討対象となる。

リザーブは「環境的な完全性を維持しながら、市場の成長と革新を支える制度を構築する」としている。

ボランタリーカーボンクレジット市場(VCM)は政府規制を超える先行的な取り組みを支援する場と位置付けられており、リザーブは今後も透明性と協働を原則に制度改革を進める方針だ。永続性をめぐる議論は、自然ベース解決策と技術的除去のバランスをいかに取るかという、国際的なCDR市場全体の方向性にも直結している。

参考:https://climateactionreserve.org/blog/2025/09/03/permanence-commentary/