米国の自然由来炭素除去開発企業チェスナット・カーボン(Chestnut Carbon)は9月16日、カナダ年金制度投資委員会(Canada Pension Plan Investment Board、CPPインベストメンツ)からシリーズBラウンドで9,000万ドル(約134億円)の追加出資を受け、累計調達額を2億5,000万ドル(約373億円)に拡大したと発表した。これは2025年の自発的カーボンクレジット市場における最大規模の資金調達の一つとなる。
同社はこれに先立ち、米国の造林型炭素除去プロジェクトとしては初となる銀行からのノンリコース型プロジェクトファイナンス枠2億1,000万ドル(約314億円)の締結も公表しており、金融面での信頼性を高めている。
森林造成で「高品質クレジット」創出
チェスナットは耕作不適地や放牧地を長期的かつ多様性のある森林に転換する造林事業を米国内で展開している。これらのプロジェクトでは国際的に信頼性の高い「ゴールド・スタンダード」認証を受けた炭素クレジットが発行され、企業の脱炭素戦略やネットゼロ目標の達成を後押しする。
CPPインベストメンツのサステナブルエナジー部門責任者ビル・ロジャーズ氏は「高品質で検証可能な炭素除去プロジェクトは、世界の脱炭素化を支えると同時に、加入者や受益者に長期的価値をもたらす」と述べ、投資の意義を強調した。
土地取得と技術開発に投資
今回の資金は主に二つの分野に充てられる。第一に土地取得で、これまでに南部8州で計6万エーカー超を確保済みである。第二に技術革新であり、独自のデータツールや特許システムを用いた森林成長のモデリング精度向上や運営効率化が進められる。
チェスナットの最高財務責任者グレッグ・アダムズ氏は「投資家の支援は、品質と恒久性を保ちながら事業を拡大するうえで不可欠だ」と述べ、企業顧客に信頼できるクレジット供給者としての役割を果たす姿勢を示した。
展望
2022年にエネルギー特化型投資会社キメリッジ(Kimmeridge)の支援で設立されたチェスナットは、森林由来の炭素クレジットに特化し、規模拡大と金融調達の両面で米国市場を牽引している。今後は2026年以降のクレジット供給開始に向け、調達資金を活用したプロジェクトの早期稼働が焦点となる。