カナダの大手金融グループであるTDバンク・グループ(TD Bank Group)は2026年1月22日、炭素除去(CDR)技術を手掛ける米チャーム・インダストリアル(Charm Industrial)から、計44,000トンのクレジットを購入する10年間のオフテイク契約を締結した。
2029年から供給が開始されるこの長期契約は、チャームにとって初となるカナダ市場への本格進出に向けた重要な資金源となる。
今回の契約を通じて供給されるカーボンクレジットは、チャーム独自のバイオマス処理技術によって生成される。
同社は、農業残渣や森林由来の廃棄バイオマスを小型の移動式熱分解装置で処理し、炭素を豊富に含む「バイオオイル」と「バイオ炭」に変換する。このプロセスのうち約80%が長期間の炭素貯留に寄与し、バイオオイルは地下の廃坑となった油井などに圧入して半永久的に封じ込め、バイオ炭は農地に散布することで数百年にわたって炭素を固定しながら土壌改良に役立てる。
チャームがカナダ進出を急ぐ背景には、同国が抱える深刻な森林火災リスクと、政府による強力なCDR支援策がある。2023年にはカナダ全土で過去最悪となる1,850万ヘクタールが焼失し、その煙による健康被害は米国を含め甚大な経済損失をもたらした。米国における山火事由来の健康被害額は、年間2,000億ドル(約29兆円)に達すると試算されている。
チャームの技術は、火災の燃料となる森林内の枯死木などを野焼きせずに回収・処理できるため、大気汚染物質であるPM2.5の排出を抑制し、公衆衛生の向上にも寄与する。同社はカナダ政府が計画しているCDRの公的調達制度や、アルバータ州に点在する数万件の放棄油井の再利用を視野に入れており、現地農家やコミュニティとの提携を通じて、炭素除去と地域経済のレジリエンス強化を同時に進める方針だ。
今回のTDバンクとの合意は、2025年末に締結された米ボーイング(The Boeing Company)との10万トン規模の契約や、フロンティア(Frontier)連合との複数年契約に続く大型案件となる。
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チャームは今後、2029年の供給開始に向けてカナダ国内での拠点整備と、モジュール型熱分解装置の量産体制を強化していく。
今回の提携は、単なる排出オフセットの枠を超え、CDRプロジェクトが「気候変動対策」と「地域の物理的リスク軽減」をいかに両立させるかを示す好例である。
特にカナダのような森林大国において、山火事燃料の削減と炭素除去を組み合わせるモデルは、政府の公的調達や金融機関のサステナブル投資を呼び込みやすい。
日本においても、放置林のバイオマス活用は大きな課題であり、チャームのような「移動式・分散型」の処理モデルは、地理的制約の多い国内市場への応用可能性を示唆している。
参考:https://charmindustrial.com/blog/td-bank-buying-cdr-from-charm-canada


