国際的な気候連携組織が、企業が炭素除去(CDR)を自社のサステナビリティ戦略に組み込むための実践的手引きを発表した。2050年のネットゼロ達成に向け、企業の行動を具体化する新たな指針として注目されている。
エクスポネンシャル・ロードマップ・イニシアチブ(Exponential Roadmap Initiative、ERI)、オックスフォード・ネットゼロ(Oxford Net Zero)、リシンキング・リムーバルズ(Rethinking Removals)、およびレース・トゥ・ゼロ(Race to Zero)の4団体は10月27日、共同で「リムーバルズ・アクション・ガイド(Removals Action Guide)」を公表した。企業が温室効果ガス削減に加え、炭素除去を補完的手段として導入するための6段階のステップを提示している。
ガイドでは、
- CDRを戦略に統合する
- 残余排出量を算定する
- 削減・除去のマイルストーンを設定する
- 多様で信頼性のある除去ポートフォリオを構築する
- 資金モデルを定義する
- 会計・報告・情報発信体制を整備する
という実行プロセスを推奨している。
ERIによると、「2050年の期限内にネットゼロを達成するためには、企業が今すぐCDRを実装に移す必要がある」と強調する。早期に取り組む企業は、リスクやコスト管理で優位に立ち、長期的に手頃な価格でCDRソリューションへアクセスできる可能性が高まるという。
CDR導入は単なる脱炭素手段にとどまらず、業務効率化や新製品・新収益源の創出、サプライチェーン強化などの副次的効果も期待されている。ガイドでは、CDRを早期に取り入れた企業こそが「業界内の気候リーダー」となると指摘している。
また、ネットゼロを掲げる企業は、自社が最終的に相殺すべき残余排出量を明示し、除去量の拡大に向けた投資を今から段階的に始めることが求められる。これらの原則は、2025年版の「エクスポネンシャル・ビジネス・プレイブック」にも組み込まれており、ERIは加盟企業に対し来年からの実装を推奨している。
国際的な気候枠組みのもとで、CDRはすべてのネットゼロ経路に不可欠とされている。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、地球温暖化を2度未満に抑えるためには、大規模な排出削減と並行して年間数十億トン規模のCO2除去が必要と指摘している。ガイドは、今後15〜20年でその市場成熟度と供給量を確保するために、企業が早期参入することの重要性を強調している。