非営利団体カスケード・クライメート(Cascade Climate)は8月18日、二酸化炭素を長期的に固定する技術「岩石強化風化(Enhanced Rock Weathering=ERW)」の導入に適した地域を探せるデジタル地図ツール「Weathering Potential Explorer(ウェザリング・ポテンシャル・エクスプローラー)」を公開した。
このツールは、気温や土壌の水分量、pH(酸性・アルカリ性の度合い)などのデータを組み合わせ、岩石がどれだけ速く分解し、CO2を吸収できるかを世界地図上に色分けして表示する。
ERWは、細かく砕いた玄武岩などのアルカリ性の岩石を農地にまき、土壌の水と反応させてカルシウムやマグネシウムを溶かす。その過程で生成される炭酸水素イオンや炭酸塩がCO2を取り込み、河川を通じて海に運ばれることで、長期間にわたり大気から炭素を除去できる。農業用石灰散布と似た仕組みだが、目的は土壌改良だけでなく炭素除去(CDR)も兼ねる点が大きな違いである。
新ツールは世界中の農地を対象に「風化ポテンシャル指数」を算出。上位20%に入る地域は、CO2を固定する反応が進みやすいとされる。ただし、このツールだけで炭素除去量を正確に見積もることはできず、鉱石の種類や粒の大きさ、散布コストや輸送手段など、追加の調査が欠かせない。
カスケード・クライメートは「現地調査や経済性の検討を補う、最初の手がかりとして活用してほしい」と説明している。
日本は酸性土壌が多いことから、ERWは農業の生産性向上と炭素除去を同時に実現できる可能性がある。カーボンクレジット市場が広がる中、今回のツールを利用して国内外の適地を比較・検討する動きが、今後の政策や企業投資を後押しするとみられる。
参考:https://cascadeclimate.org/blog/weathering-potential-explorer