米カリフォルニア州シリコンバレーを拠点とするクライメートテック企業、カーボンゼロ・エコ(CarbonZero.Eco)は12月4日、同州コルサ郡にて初となる商用バイオ炭生産施設の稼働を開始したと発表した。あわせて、直接空気回収(DAC)技術の世界的リーダーであるスイスのクライムワークス(Climeworks)と、炭素除去(CDR)クレジットの販売に関する契約を締結したことを明らかにした。
今回の発表における最大の焦点は、DAC分野の先駆者として知られるクライムワークスが、高品質なCDRポートフォリオの一環として、カーボンゼロ・エコのバイオ炭クレジットを採用した点にある。カーボンゼロ・エコは、17歳の起業家であるハーパー・モス(Harper Moss)CEOが設立し、グーグル(Google)やメタ(Meta)、アマゾン(Amazon)の幹部らから数百万ドル(数億円規模)の支援を受けてステルスモードから脱却したばかりの注目株である。
カーボンゼロ・エコが生産するバイオ炭由来のカーボンクレジットは、カリフォルニア州のセントラル・バレー地域で大量に発生するアーモンドの殻などの農業廃棄物を原料とする。同地域では年間50万トン以上のアーモンド殻が焼却または放置され、腐敗プロセスを通じて二酸化炭素(CO2)を排出している。同社はコルサ郡およびヨロ郡の数百のアーモンド農家と提携し、これらの廃棄物をバイオ炭に加工することで、最大150万トンのCO2排出を回避・固定化することを目指す。
新たな生産施設は、アーモンド殻の集積地に隣接して建設されており、輸送に伴う排出量を最小限に抑える設計となっている。生産されたバイオ炭は堆肥に混合され、提携農家の土壌改良材として還元される。この「クローズドループ・システム」により、農家は廃棄物処理コストを削減しつつ、土壌の質を向上させることが可能となる。
特筆すべきは、バイオ炭による水資源保全の効果である。同社によると、バイオ炭で処理された土壌は保水力が20%向上するという。カリフォルニア州では地下水の枯渇が深刻化しており、年間500の流域で水位低下が報告されている。バイオ炭の導入により、農業用水の使用量を削減し、地域の水資源枯渇の食い止めに寄与するとしている。
カーボンゼロ・エコの創業者兼CEOであるハーパー・モス氏は声明で、「この施設は、カーボンネガティブ農業を実用的かつ収益性の高いものにするための大きな一歩だ。農業廃棄物が発生する場所に直接プラントを設置することで、農家、環境、気候に利益をもたらすシステムを構築している」と述べた。
クライムワークスとの提携についての詳細は、金額や規模は非公開とされているものの、長期間の炭素固定(数千年規模)が可能であるバイオ炭の品質が、業界大手の基準を満たしたことを示唆している。カーボンゼロ・エコは今後、年間3万トンのバイオ炭生産能力を持つ独自のキルン(窯)技術を活用し、急速な事業拡大を図る方針だ。

