セメントCCUSスタートアップ、27億円の資金調達 CO2鉱物化セメント添加剤量産へ

村山 大翔

村山 大翔

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カーボン・アップサイクリング・テクノロジーズ(以下、CUT)は18日、インパクト投資ファンドのビルダーズ・ビジョン主導で1,800万ドル(約27億円)を調達したと発表した。

資金はオンタリオ州ミシサガのアシュ・グローブセメント工場で進む炭素除去(CDR)型セメント添加剤プロジェクトの拡張と、ギリシャTITANグループ2工場での導入実証に充てる。

CUTの特許技術は、現場で回収したCO2をスチールスラグやフライアッシュなど低付加価値素材に鉱物固定し、高性能の補強セメント材料(SCM)へ転換する。1トン当たり最大60%の排出削減効果が見込め、耐久性向上により既存セメントの使用量も抑えられる。

同社は今後3年間で北米・欧州に商用ライン10基を展開し、年間約100万トンの「CO2ミネラルクレジット」創出を目指す。生成クレジットは北米45Qやボランタリーカーボンクレジット市場の鉱物化メソドロジーを適用する計画だ。

調達ラウンドにはカナダ産業開発銀行(BDC)、OGCI系のClimate Investment、CRH Ventures、Oxy Low Carbon Ventures、TITANなど既存株主が再投資した。業界横断の出資により、サプライチェーン多角化と各地域での原料確保を同時に進める狙いがある。

ビルダーズ・ビジョンのジェームズ・リンゼー投資ディレクターは「『廃棄物と排出物を価値ある資材に変える』というCUTのアプローチは、市場が求める即時スケール可能なソリューションだ」と強調した。

一方、CUTのアプールヴ・シンハCEOは「低炭素建設の土台を築き、カーボンクレジット創出を通じて実用的かつ収益性の高いCDRを実証する」と述べた。

CDRクレジット需要が急拡大するなか、セメント由来排出を削減する鉱物化技術は、市場競争力と環境規範の両面で注目が高まっている。CUTは今年度内にISO認証を取得し、2027年までに累計200万トンのカーボンクレジット供給体制を固める方針だ。

参考:https://www.prnewswire.com/news-releases/carbon-upcycling-closes-18m-investment-led-by-builders-vision-to-bolster-cement-manufacturing-resiliency-302484838.html