米国を拠点とするカーボン・マネジメント企業のDevvStream(デブストリーム)と、バイオマス由来の低コスト燃料を生産するSouthern Energy Renewables(サザン・エナジー・リニューアブルズ)は、大規模なカーボンネガティブの持続可能な航空燃料(SAF)とグリーンメタノールの生産を目的とした合併契約を締結した。この合意は2025年12月3日に発表され、両社は米国を拠点とする新たなナスダック上場企業となる。カーボンクレジット創出の専門知識を持つDevvStreamと、バイオマスを燃料に転換する技術を持つSouthernが統合することで、規制強化が進む航空・海運業界に対し、環境資産の収益化を通じて低炭素燃料の実質コストを削減するソリューション提供を目指す。
「環境資産の収益化」で燃料コストの壁を打破
今回の合併の核心は、DevvStreamの持つ「環境資産(カーボンクレジットなど)の収益化能力」を、Southernがルイジアナ州で計画する大規模なバイオマス燃料施設に組み込む点にある。
Southernのルイジアナ州の施設は、地域の木材廃棄物バイオマスを利用し、統合型炭素回収(Carbon Capture and Sequestration: CCS)を通じて、市場でも最も低いライフサイクル炭素強度(LCCI)を持つカーボンネガティブのSAFとグリーンメタノールを生産する計画だ。このカーボン負の燃料生産プロセスと、DevvStreamによるカーボンクレジットの創出・販売を組み合わせることで、高コストが課題となっていた代替燃料の採算性を改善し、実質的な燃料コストを下げることが可能になると見込まれる。
DevvStreamの会長で、合併後の新会社のCEOに就任予定のカール・スタントン氏は、「航空・海運事業者は最も意欲的な脱炭素化の義務に直面しているが、現在の再生可能燃料は化石燃料よりも著しく高価であり、移行を遅らせている」と指摘し、「今回の合併は、環境資産の能力によってそのコスト負担を軽減し、大規模なコンプライアンスを可能にすることを目的としている」と述べた。
SAF市場の規制強化とプロジェクトへの資金コミットメント
欧州連合(EU)の「ReFuelEU Aviation」や国際海事機関(IMO)などによる規制の厳格化は、航空・海運事業者に低炭素代替燃料への移行を促している。新会社は、米国内で調達可能な原料と労働力を用い、これらの規制対応を支援する垂直統合型プラットフォームの構築を目指す。
Southernの最高戦略責任者(CSO)であるネビン・スモールズ氏は、「我々のバイオマス廃棄物からメタノール、そしてSAFへの経路は、実証済みの技術と統合型CCSに依存しており、市場で最も低いライフサイクル炭素プロファイルの一つを目指している」と説明した。
プロジェクトの資金面では、Southernはルイジアナ州コミュニティ開発局(Louisiana Community Development Authority)から4億200万ドル(約603億円)の債券配分を確保しているほか、合併に先立ちDevvStreamに対して1株あたり15.58ドルで約200万ドル(約3億円)のPIPE(私募による株式投資)を実施し、DevvStreamのカーボン資産事業の戦略的な重要性を認識している。
新会社は「Southern Energy Renewables」として事業を継続する予定で、2026年上半期中の合併完了を目指す。株主構成はSouthernの株主が約70%、DevvStreamの株主が約30%となる見込みだ。

