世界の主要企業が参加する新たな国際連合体「カーボン・メジャーズ(Carbon Measures)」が発足した。炭素排出の二重計上を排し、製品単位で正確に排出量を可視化する「台帳型カーボン会計フレームワーク」の構築を目指すもので、科学的根拠と財務会計の原則を融合した仕組みにより、市場を通じた効率的な排出削減を促す狙いがある。初代最高経営責任者(CEO)には、監査法人EYでサステナビリティ部門を率いたエイミー・ブラキオ氏が就任した。
同連合には、エクソンモービル、三菱重工業、三井物産、三井OSKライン、エア・リキード、BASF、バイエル、サンタンデール銀行、ヌーコア、アブダビ国営石油(ADNOC)など世界18社が創設メンバーとして参加。産業、金融、エネルギー分野を横断する広範な企業が名を連ねている。
ブラキオCEOは発足声明で「正確なデータが良い意思決定を導く。だが排出量データは長年にわたり推計と善意に頼ってきた。今後はそれでは不十分だ」と述べ、「市場の力を解き放ち、投資を誘発し、持続的な排出削減を実現する仕組みをつくる」と語った。
カーボン・メジャーズは、電力、燃料、鉄鋼、コンクリート、化学品など、世界のサプライチェーンの基盤をなす主要産業製品を対象に、炭素強度(カーボン・インテンシティ)基準の設計を優先課題とする。これにより、製品ごとの排出効率を明確化し、低炭素生産への投資を市場で評価する新たな競争原理を導入する。
加盟企業のトップも声明を発表した。エア・リキードのフランソワ・ジャコウCEOは「正確なカーボン会計と製品レベルの炭素強度基準の調和が不可欠だ。産学官の協働によって低炭素化を加速させる」と強調した。サンタンデール銀行のアナ・ボティン会長は「バリューチェーン全体での透明な排出算定が、実効的な気候行動の土台となる」と述べ、国際的に比較可能なデータ基盤の整備を歓迎した。
また、エクソンモービルのダレン・ウッズCEOは「測定できなければ管理もできない。正確なカーボン会計こそが競争を促し、市場の力で排出を下げる出発点だ」と指摘した。ヌーコア社のレオン・トパリアンCEOも「産業間で比較可能な会計基準が、信頼できる削減努力を支える」と述べ、透明性向上への期待を示した。
同連合は今後、政府・企業・学術界と連携し、国際的に整合した排出算定基準の策定を推進する。台帳型カーボン会計は、カーボンクレジット市場の信頼性を高める基盤として注目されており、企業の脱炭素投資判断にも大きな影響を与える可能性がある。
参考:https://www.carbonmeasures.org/news/leading-global-businesses-unite-to-launch-carbon-measures