ヨハネスブルグ発 「カーボン・マーケット・アフリカ・サミット2025」開幕 大陸共通の炭素経済構築へ始動

村山 大翔

村山 大翔

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アフリカ全域の政府関係者、規制当局、金融機関、プロジェクト開発者が一堂に会する「カーボン・マーケット・アフリカ・サミット2025(CMAS 2025)」が10月21日、南アフリカ・ヨハネスブルグで開幕した。主催はVUKAグループで、国連開発計画(UNDP)をはじめ複数の国際機関が後援。23日まで開催され、初日は「カーボン市場入門」マスタークラスが行われた。

アフリカは広大な森林、湿地、再生可能エネルギー資源など、カーボンクレジット創出の潜在力を持つ。国際エネルギー機関(IEA)によると、2024年に発行された世界のカーボン・クレジットのうち、アフリカは約20%を占め、2020年比で倍増した。市場拡大の機運が高まる中、サミットでは「市場の整合性と信頼性」を軸に、制度設計と投資誘導の両輪をどう確立するかが焦点となる。

初日の基調講演では、南アフリカ環境・森林・漁業相ディオン・ジョージ氏、世界グリーン成長機構(Global Green Growth Institute)カーボンプライシング責任者フェネラ・アオアン氏、UNDPアフリカ持続可能金融ハブ代表マクスウェル・ゴメラ氏らが登壇。「変化する世界環境下でアフリカの持続的成長を支えるカーボン市場拡大」をテーマに議論した。

また、「COP30への道筋:アフリカのカーボン戦略を世界枠組みにどう整合させるか」では、パリ協定第6条との連携方針が議題に上った。「高い市場整合性の実践」パネルでは、過去の不透明なカーボンクレジット取引を教訓に、信頼性ある検証・認証体制の構築が求められた。

投資家向けの第2日目には、「気候資本をスケーラブルな炭素ソリューションと結ぶ」円卓会議が開催され、アフリカ開発銀行(AfDB)などがリスク軽減策や新たな投融資枠組みを議論する。地域間連携では、東西アフリカのカーボン市場・気候資金同盟(EAACMCF / WAACMCF)が共同対話を行う。

サミットの気候影響評価を担うのは英One Carbon World(OCW)で、自らのカーボンフットプリントを監査する試みも注目される。これは「クレジットを売るだけでなく、信頼を売る」姿勢を象徴するものだ。

具体例として、ナイジェリアでは年間32.5万〜35万台の省エネ調理用ストーブ導入で年間45万トンのCO2排出削減が見込まれ、1トン当たり15〜20米ドル(約2,300〜3,100円)で取引された場合、年間680万〜920万米ドル(約10億〜13億円)の収益となる。このような案件が地域雇用やバリューチェーン形成を促す可能性がある。

アフリカの気候投資ギャップは2030年までに2兆5,000億米ドル(約370兆円)に達すると推定される。健全で高信頼なカーボン市場の構築は、その埋め合わせの一助となるだろう。CMAS2025では、各国が第6条取引の認可ルールや登録制度を明確化できるか、自然に基づく解決策(NBS)向け金融商品が具体化するかが注目される。

今後、各国政府、民間投資家、国際機関が整合性ある市場基盤で連携できれば、アフリカは「持続可能で包摂的な炭素経済」という新たな成長モデルを描けると期待される。

参考:https://africasustainabilitymatters.com/carbon-markets-africa-summit-2025-opens-in-johannesburg-setting-the-stage-for-a-unified-continental-carbon-economy/