CO2回収施設から 「世界初の食品グレードCO2供給」 CCUS市場をリードし、カーボンクレジットの創出も目指す

村山 大翔

村山 大翔

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ノルウェーのカーボンセントリック(Carbon Centric)は9月29日、東部ラッケスタに建設した炭素回収施設で初の食品グレード液化CO2(食品添加物としての使用基準を満たす、高純度の二酸化炭素)を顧客に納入し、正式に商業運転を開始した。

国内では政府主導の「ロングシップ(Langskip)」計画以外で初めて稼働する炭素回収施設であり、世界でも廃棄物発電所にフルスケールのCO2回収設備を備えた例は初めてとなる。

同社最高経営責任者(CEO)のフレドリック・ヘーガー氏は「これはラッケスタにとって、そして気候にとっても歴史的な日だ。我々が初めて捕捉したCO2を顧客に届けたことで、技術が実用段階に入ったことを示せた」と述べた。施設の公式開所式は10月16日に予定されており、招待客と報道関係者に公開される。

ラッケスタの施設は、年間約1万トンのCO2を捕捉する能力を持ち、焼却炉の排ガスを全量処理できる設計となっている。捕捉したガスは精製され、食品グレードとして飲料や冷却材など多様な産業用途に供給される。現在、認証機関のDNVによる食品安全規格「FSSC 22000」の取得手続きが進んでいる。

カーボンセントリックは今回の実用化を起点に、事業を北欧全域へ拡大する計画だ。次の案件として、ソロール・バイオエネルギー(Solør Bioenergi)と共同で生物質発電所からのCO2を捕捉する、バイオエネルギー炭素回収・貯留(BECCS)プロジェクトをノルウェー・キルケネールで開発中である。同計画では年間約3万2,000トンのCO2を捕捉し、2028年から永続貯留によるカーボンクレジットの発行を開始する見通しだ。

同社は「産業向けリサイクルCO2供給から、永続的なCDRの提供へ」と事業領域を広げる方針を示しており、2030年までに累計100万トン規模の年間捕捉能力を確立する目標を掲げている。欧州のCCUS市場で主導的な地位を確立し、大気中のCO2濃度を350ppmに引き下げるという長期ビジョンも明示している。

参考:https://www.carboncentric.no/post/verdensnyhet-starter-opp-i-rakkestad