CO2除去事業にノルウェー政府が1.3億円規模の補助金交付 BECCSで年間10万トンのCO2回収を実現

村山 大翔

村山 大翔

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ノルウェーのカーボン・セントリック(Carbon Centric AS)は1月8日、同国政府系企業のエノバ(Enova SF)から、スコグン(Skogn)地区のバイオエネルギー工場に設置する炭素回収設備への補助金を獲得した。

本プロジェクトは、バイオ燃料由来のCO2を年間10万トン回収し、永続的な炭素除去(CDR)の実現を目指す。最終投資決定(FID)は2027年、稼働開始は2028年から2029年を予定している。

今回の補助金は951万ノルウェー・クローネ(約1億3,300万円)で、事前プロジェクト段階の費用の50%をカバーする。資金はノルウェー気候環境省の管轄下にあるエノバの「産業2050(Industry 2050)」プログラムから拠出される。同プログラムは、産業部門におけるグリーン技術の普及と、国内の炭素回収プロジェクトの促進を目的としている。

回収の対象となるのは、欧州最大級の新聞用紙生産拠点であるノルスケ・スコグのスコグン工場だ。カーボン・セントリックは、持続可能なバイオマス燃焼による蒸気生成過程で排出されるCO2を捕捉する。これはBECCSと呼ばれ、大気中のCO2を実質的に削減するネガティブエミッションの手法として期待されている。

カーボン・セントリックは、回収したバイオ由来のCO2を永続的なCDRクレジットとして販売するほか、持続可能な液化CO2としての再利用も視野に入れている。同社はすでにノルウェー国内の複数の廃棄物・バイオマス焼却施設でプロジェクトを展開しており、今回のスコグンでの事業はそのネットワークをさらに拡大するものとなる。

エノバによるカーボン・セントリックへの支援は、今回が初めてではない。過去にもソロル・バイオエネルギの廃棄物発電所における炭素回収プロジェクトに対して補助金を交付している。政府系機関による継続的な資金提供は、初期投資のハードルが高い炭素除去技術の商用化を後押しする重要な役割を果たしている。

今後の焦点は、2027年に予定されている最終投資決定へ向けた技術的・経済的フィジビリティの精査だ。欧州における炭素市場の価格動向や、高精度なCDRクレジットに対する需要の伸びが、プロジェクトの最終的な成否を左右することになる。

今回のニュースは、BECCSが研究段階を脱し、商用フェーズへ着実に移行していることを示している。特に注目すべきは、政府系機関であるエノバが事前プロジェクト(Pre-project)の段階で資金を投入し、民間のリスクを軽減している点だ。

日本の事業者にとっての教訓は、カーボンクレジットの質が「排出回避」から「炭素除去」へとシフトしている潮流だ。バイオ由来のCO2回収は、クレジット市場において最も高い信頼性と単価が見込まれる領域である。

今後、日本国内でも製紙業やバイオマス発電所を核とした同様のモデルが増加する可能性があり、北欧の先行事例はビジネスモデル構築の重要な参照点となるだろう。

参考:https://www.carboncentric.no/en/post/enova-grant-for-carbon-capture-project-at-skogn