英バイオ炭スタートアップが4.5億円の資金調達 バイオ炭「CreChar」で国際的なCDR展開を加速

村山 大翔

村山 大翔

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英エディンバラを拠点とするバイオ炭スタートアップ、カーボジェニックス(Carbogenics)は、300万ドル(約4億5,000万円)の投資および助成金を獲得した。

同社はこの資金を活用し、独自のバイオ炭製品「CreChar(クリーチャー)」の生産能力を拡大するとともに、英国および米国市場での事業展開を本格化させる。バイオガス生産の効率化と、検証可能な二酸化炭素除去(CDR)を両立する同社の技術は、ボランタリー炭素市場における高品質なクレジット創出の担い手として期待されている。

今回の資金調達には、デンジャラス・ベンチャーズ(Dangerous Ventures)やグリーン・エンジェル・ベンチャーズ(Green Angel Ventures)、スコティッシュ・エンタープライズ(Scottish Enterprise)などのVCに加え、イノベートUK(Innovate UK)や米ニューメキシコ州政府等からの公的助成も含まれる。

同社の核心技術である「CreChar」は、未利用のバイオマス残渣を原料とするカーボンネガティブなバイオ炭製品である。主にバイオガス発電(メタン発酵)や廃水処理プロセスでの活用に特化しており、システム内に添加することでpH値を安定させ、微生物の活動を活性化させる特性を持つ。同社によれば、同じ原料供給量であってもバイオガス生産量を最大10%向上させることが可能であり、プラントの収益性と環境性能を同時に引き上げることができる。

カーボジェニックスは、エディンバラ大学からのスピンオフとして2016年に設立された。今回の資金注入により、現在は英国内に集約されている生産拠点を米国にも拡張する計画だ。

特に米国ニューメキシコ州では、農業や林業の残渣をバイオ炭へと転換し、放置された「孤児井戸(Orphan Wells)」の封鎖や、大気直接回収(DAC)技術の補助、土壌改良、そして大規模な炭素貯留(Carbon Sequestration)プロジェクトに活用することを目指している。また、スコットランド水道公社(Scottish Water)との共同プロジェクト「Filachar」を通じて、下水汚泥の持続可能な管理と、水産業界における環境負荷低減ソリューションの開発も継続している。

バイオ炭は、炭素を数百年にわたって安定的に固定できる「永続的な除去(Permanent Removal)」の手法として、世界中の投資家から注目を集めている。政府がネットゼロ目標を強化する中、カーボジェニックスはデータに基づいた厳格な測定・報告・検証(MRV)体制を構築し、市場の透明性を高めることで差別化を図る構えだ。

エド・クレイグ(Ed Craig)CEOは「今回の調達は、当社の技術が世界で最も差し迫った環境課題に対処できるという確信を得た結果だ。英国、欧州、そして米国において、実効性のある炭素ソリューションの開発を加速させていく」と述べている。

バイオ炭は、日本国内でも「J-クレジット制度」において既に農地施用などの手法で承認されており、親和性の高い領域である。特筆すべきは、同社が「単なる埋設」に留まらず、バイオガス生産効率の向上という「経済的インセンティブ」をセットで提供している点だ。

これは、コスト負担を懸念する日本の中小規模なバイオガス事業者や自治体の廃水処理施設にとって、脱炭素と収益改善を両立させる極めて現実的なモデルとなるだろう。

参考:https://www.carbogenics.com/news/carbogenics-secures-3-million-investment-for-growth-and-international-expansion/