炭素除去(CDR)企業カーボ・カルチャー(Carbo Culture)は、オランダ北ホラント州ミッデンメーアに位置するエネルギークラスター「ECWエナジー(ECW Energy)」敷地内で、新たなバイオ炭生産施設「ARCミッデンメーア(ARC Middenmeer)」を建設すると発表した。年間2万トン超のCO2を永続的に除去しつつ、園芸用バイオ炭4万立方メートルと16メガワットの再生可能エネルギーを生産する予定だ。
オランダは欧州最大級の温室園芸産業を抱え、トマトやキュウリなどの供給基地として機能している一方で、エネルギー需要や気候変動対応に課題を抱える。カーボ・カルチャーは、同産業の温室群にバイオ炭を提供し、土壌の健全化と資材輸入依存の低減を図る。役目を終えたバイオ炭は圃場に埋設され、1,000年以上の長期にわたりCO2を固定する仕組みだ。
ECWエナジーのロバート・キールストラ最高経営責任者(CEO)は、「当社は新技術のローンチングカスタマーを目指している。カーボ・カルチャーのバイオ由来熱と電力は、当社の持続可能なエネルギーポートフォリオを理想的に補完する」と述べた。
ECWエナジーのミッデンメーア拠点は、600ヘクタール超の温室群、2つのデータセンター、風力・太陽光・バイオマス・地熱・天然ガスを含む総計400メガワット超のエネルギー供給能力を備える。今回のプロジェクトは、こうした多層的インフラと連携し、「食料供給と炭素除去の両立」という新たな産業モデルの実証を目指す。
欧州連合(EU)は現在、CDR認証制度「カーボン・リムーバル・サーティフィケーション・フレームワーク(CRCF)」や、EU排出量取引制度(EU ETS)への永続的除去の組み込みを議論している。カーボ・カルチャーは、今回の拠点を「実現可能な炭素除去の象徴」と位置づけ、将来的には同様の施設を各地に展開し、食・エネルギー・炭素の循環を担う新産業の構築を目指す。
同社は自社技術「カーボライシス(Carbolysis)」を用い、炭素を永続的に固定しながら産業の脱炭素化を支援するスケーラブルなCDR工場の建設を進めている。
参考:https://carboculture.com/resources/announcing-arc-middenmeer