「海水からCO2を直接吸収する」製造拠点を開設、米国内でバリューチェーンを確立

村山 大翔

村山 大翔

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米カリフォルニア州のクライメートテックCapturaは10日、パサデナに新たな本社および製造施設を開設したと発表した。敷地面積は約2,800平方メートル(30,000平方フィート)で、同社の中核技術である電気透析システムの製造から研究開発、人材拡充までを担うグローバル拠点となる。

この施設は、バイポーラ膜の製造からスタックの組立てに至るまでの全工程を米国内で完結させる、初の商業規模の製造拠点である。Caltech(カリフォルニア工科大学)の技術を基盤とするCapturaは、直接海洋回収(DOC=Direct Ocean Capture)技術の商業化に向けた体制強化を進めている。

米国内製造で供給網を強化 他産業への展開も視野

CEOのスティーブ・オールドハム氏は声明で「本施設は米国内における初の完全な電気透析システム製造拠点であり、地域雇用を創出し、サプライチェーンの強化と対外依存の削減を実現するものだ」と述べた。

Capturaの電気透析システムは、既存の商用技術と比べて最大10倍の性能を持ち、より低コスト・低エネルギーで稼働する点が特徴。今回の拠点では、DOC装置の自社展開にとどまらず、淡水化、廃水処理、ライフサイエンス、重要鉱物の抽出といった他分野にも同技術を展開する方針である。

開発はCaltech発 高性能かつPFASフリーの膜を採用

同社が開発した膜はPFAS(有機フッ素化合物)を含まない上、ポリマー素材の採用により既存品より大幅なコスト削減を実現。スタック設計も最適化され、製造から組立てまでを垂直統合的に行える点が競争優位につながる。

最高技術責任者(CTO)で共同創業者のCXシャン氏は「パサデナのCaltechで生まれた技術をこの地でスケールアップすることは理にかなっている。本施設により、最高性能かつ最小コストの電気透析ソリューションを提供できる」と述べた。

CO2を“海水から直接”除去 炭素循環に貢献

CapturaのDOC技術は、海水から化学添加剤を使わずにCO2を直接分離・回収できる。抽出されたCO2は永久貯蔵または再利用が可能であり、同時に海洋が大気中のCO2をさらに吸収できる状態を維持する。

同技術によって生成されたカーボンクレジットは、2025年初頭に日本の海運大手・商船三井(MOL)への初販売が発表されており、今回の拠点整備は商業展開のさらなる加速につながる。

今後の展望、雇用拡大と他国展開に注目

同社は本施設を起点に、エンジニアリングや製造、オペレーション分野の専門人材の採用を進める方針を明言している。北米での展開を軸に、今後はアジアや欧州などへの技術移転・事業展開にも関心を示しており、2025年後半には追加の販売契約や生産拠点の発表が見込まれる。

参考:https://capturacorp.com/captura-hq-and-manufacturing-facility/