カナダCO2除去市場が78社参入で急拡大 政府が戦略的資源と政策の優位性を強調

村山 大翔

村山 大翔

「カナダCO2除去市場が78社参入で急拡大 政府が戦略的資源と政策の優位性を強調」のアイキャッチ画像

カナダエネルギー規制庁(CER)は2026年1月21日、同国の炭素除去(CDR)産業が急速に成長しているとする最新の市場分析を公表した。

現在、カナダ国内には78社のCDR関連企業が拠点を置き、計画中を含め48のプロジェクトが進行している。この背景には、産業用炭素価格制度や投資税額控除といった強力な政策支援に加え、広大な森林や地学的貯留層などの豊富な天然資源がカナダを世界的なCDRハブへと押し上げている現状がある。

カナダのCDR企業には米マイクロソフト(Microsoft)やカナダのショッピファイ(Shopify)、米アマゾン(Amazon)といった世界的企業が相次いで投資を実行している。マッキンゼー・アンド・カンパニー(McKinsey & Company)の予測では、世界のCDR市場は2050年までに最大1兆2,000億ドル(約180兆円)規模に達する見通しであり、カナダはその成長を取り込む戦略的なポジションにある。

カナダの優位性は、多様な炭素除去手法を支える資源背景にある。

大気直接回収(DAC)には水力や風力、原子力による低炭素電力が活用され、バイオエネルギー炭素回収・貯留(BECCS)には豊富なバイオマス資源が供給される。また、開発が進んだ鉱業セクターは、岩石の風化を促進して二酸化炭素(CO2)を固定する強化風化(ERW)や鉱物化技術の基盤となっている。カナダエネルギー規制庁(CER)は「カナダは気候政策と資源の両面で、CDR産業を育成するための独自の優位性を備えている」と指摘した。

一方で、商業化に向けた課題も浮き彫りになっている。

主要な手法であるDACのコストは現在1トンあたり100ドル(約1万5,000円)から300ドル(約4万5,000円)と高水準にあり、エネルギー消費の抑制が急務となっている。また、海洋ベースのCDRにおける安全性の検証や、BECCS推進に伴う土地利用を巡る農業セクターとの競合、さらに回収したCO2を輸送・貯留するためのインフラ整備が今後の焦点となる。

カナダ政府は2023年に発表した「炭素管理戦略」に基づき、技術革新への資金援助や市場需要を創出するための規制整備を優先事項に掲げている。特にマニトバ州で建設が進むディープ・スカイ(Deep Sky)の施設は、世界最大級のCDR拠点になることが期待されている。政府は今後、研究開発への投資を継続しつつ、国内外の投資を呼び込むための法的枠組みの強化を急ぐ方針だ。

今回のCERの報告は、カナダが単なる資源国から「炭素管理の先進国」へと変貌を遂げようとしている強い意志を示している。日本企業にとっても、カナダはDACやCCSの適地としてだけでなく、高品質な国外クレジットの調達先として重要性が増すだろう。

特に、ディープ・スカイのような大規模プロジェクトの動向は、将来的なクレジット価格の指標となる可能性が高いため、注視が必要である。

参考:https://www.cer-rec.gc.ca/en/data-analysis/energy-markets/market-snapshots/2026/market-snapshot-the-rise-of-canadas-carbon-dioxide-removal-industry.html