カナダ政府、BC州で炭素管理技術に約8億円支援 「CO2を資産に変える産業」育成へ

村山 大翔

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カナダ連邦政府は9月8日、ブリティッシュ・コロンビア州の3社に総額580万カナダドル(約8億円)を拠出し、炭素回収・利用・貯留(CCUS)関連技術の開発を後押しすると発表した。投資は国内の低炭素イノベーションを加速し、産業部門の排出削減を進める狙いだ。

資金はエネルギー・天然資源省のティム・ホッジソン大臣が発表したもので、バンクーバーのカーボンキャプチャー企業スバンテ・テクノロジーズ(Svante Technologies)、バーナビーのアノダイン・ケミストリーズ(Anodyne Chemistries)、バンクーバーのアゴラ・エナジー・テクノロジーズ(Agora Energy Technologies)の3社が対象となる。

スバンテは130万カナダドル(約1億8,000万円)を受け、フィルターの耐久性を含む捕集システムの試験体制を強化する。アノダインには200万カナダドル(約2億8,000万円)が交付され、CO2をギ酸塩へ変換するプロセスを拡張する。ギ酸塩は産業用途で需要のある化学物質だ。アゴラは240万カナダドル(約3億3,000万円)を受け、低純度排ガスを用いた炭素利用技術の開発を進める。

ホッジソン大臣は「これらの投資により、カナダは安全で信頼できる低炭素エネルギーの世界的供給国に向け迅速に前進している」と述べた。今回の資金は、2021年予算で創設された総額3億1,900万カナダドル(約440億円)の「エネルギー・イノベーション・プログラム」の一環であり、研究開発支援に加え税額控除なども組み込まれている。

スバンテ共同創業者のブレット・ヘンケル氏は「政府の支援は当社だけでなく、カナダ全体の炭素管理分野への強い信頼を示すものだ」とコメントした。アノダインのイアン・エヴァンズCEOも「CO2を負債ではなく価値ある資産へ転換することが可能であり、収益性と持続可能性を両立できる」と強調した。

カナダ政府は2024年予算で930億カナダドル(約13兆円)規模のクリーンエネルギー優遇策を打ち出しており、雇用創出と国際競争力の確保を掲げている。今回の投資はその一環であり、2050年までのカーボンニュートラル実現を目指す道筋の一部となる。

参考:https://www.svanteinc.com/press-releases/natural-resources-canada-awards-1-3m-to-canadian-carbon-capture-removal-innovator-svante/