カリフォルニア州最大のエネルギー企業であるカリフォルニア・リソーシズ(California Resources Corporation、以下CRC)は10月16日、同州初の炭素回収・貯留(CCS)事業「カーボン・テラボールトI(Carbon TerraVault I、以下CTV I)」の起工式をケルン郡エルクヒルズ油田で実施した。州内で初めて米環境保護庁(EPA)からクラスVI井戸の最終許可を取得したプロジェクトであり、2026年初頭にCO2の商業注入を開始する計画だ。
CTV Iは、枯渇した油田層を活用し、年間最大160万トン、累計3,800万トンのCO2を恒久的に地中封入する能力を持つ。プロジェクトには、世界的資産運用大手ブルックフィールド(Brookfield)が49%を出資し、CRCが51%を保有する共同事業として推進されている。
起工式には州議会議員や自治体関係者が出席し、地域経済と環境政策の両立を象徴する節目として注目を集めた。タフト市のデイヴ・ノーア市長は「私たちは新しい技術を恐れない。115年にわたりエネルギー革新の中心にあり続けた地域として、この挑戦を受け入れる」と述べた。
CRCのフランシスコ・レオン最高経営責任者(CEO)は「CTV Iはカリフォルニアの炭素マネジメント経済の礎であり、スケールのある気候ソリューションの展開を牽引する」と強調した。また、カリフォルニア大気資源局(CARB)のスティーブン・クリフ事務局長は「このプロジェクトは、雇用とクリーンエアを両立できることを証明するものだ」と述べた。
同州は2045年までのカーボンニュートラル達成を掲げており、産業部門からの排出削減策としてCCSの商業化が急速に進んでいる。特に油田地帯であるケルン郡は、既存の地質データとインフラを生かしたCO2貯留の最有力地域とされ、今後複数のCCSプロジェクトが計画中だ。
今回のCTV Iは、石油生産地域が「炭素貯留拠点」へと転換する象徴的事例であり、米国西海岸における炭素除去(CDR)産業の拡大にも波及効果を及ぼす可能性が高い。レオンCEOは「これは始まりにすぎない」と述べ、将来的には他地域への展開も視野に入れている。