カリフォルニア州議会で8月20日、カリフォルニア州キャップアンドトレード制度の運用を2030年から2045年まで延長する法案の審議が本格化した。法案には、企業が活用できるカーボンオフセットの利用ルール見直しが盛り込まれている。制度延長は州の気候政策の柱を安定させる狙いだが、環境団体と産業界の双方から異なる圧力を受けている。
この制度は2013年に導入され、発電所や製油所など大規模排出源に排出枠を割り当て、不足分を市場で売買できる仕組みである。現行制度は2030年で期限を迎えるが、ギャビン・ニューサム州知事(民主党)は「大幅な変更を伴わない形での再承認」を議会に要請してきた。
今回の法案を提出したのは州議会下院議員ジャッキー・アーウィン氏(民主党)で、特にオフセットの利用制限が焦点となっている。カーボンオフセットは、森林保全や土壌炭素吸収など排出削減プロジェクトを通じて得られるクレジットを購入する仕組みであり、企業は自社の直接削減の代替として利用できる。しかし、オフセットの信頼性や追加性をめぐり批判も強く、環境団体は「排出削減努力の先送りにつながる」と主張している。
州政府の試算では、制度の延長によって市場の安定性が増し、数百億ドル規模(数兆円規模)の排出権取引と投資が維持される見込みだ。環境保護団体は、延長に賛同する一方で「オフセット利用の厳格な制限」や「直接的な排出削減の比率拡大」を求めている。産業界は逆に「オフセット利用枠を縮小すればコストが急増する」と警告しており、調整は難航が予想される。
カリフォルニア州の排出量取引制度は、カナダ・ケベック州と連携しており、北米最大のカーボンクレジット市場を形成している。
法案は今秋の州議会で審議が進められ、成立すれば2045年までに同州の温室効果ガス排出実質ゼロを目指す政策の中心に据えられる見通しだ。