米カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は9月25日、ブラジルのマリナ・シウバ環境・気候変動相と会談し、両者の気候・環境分野での協力を拡大する覚書(MOU)に署名した。今回の協定は、11月にブラジルで開催される国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP30)を前にした動きであり、カーボンクレジット市場の活用や森林保護、クリーンエネルギー導入などを柱とする。
ニューサム知事は会見で「地球規模の課題には地球規模の協力が必要だ」と述べ、特に森林保全や有害汚染物質の削減、カーボンクレジットを活用した経済成長の可能性を強調した。
両者は市場ベースのカーボンプライシング制度の開発・実施を進めることで合意した。高品質なカーボンオフセットの活用が中心に据えられており、排出削減義務と並行してボランタリーカーボンクレジット市場(VCM)の取引拡大が期待される。また、2030年までに陸域と海域の30%を保全する目標を共有し、自然に基づく解決策(Nature-based Solutions)や生物多様性保護を進める。
シウバ環境相は「今回の協定は、ブラジルとカリフォルニア双方が掲げる気候中立目標―2050年と2045年―の達成を後押しする」と述べ、米国連邦政府が気候対策に消極的な中で、州レベルの国際協力の重要性を強調した。
今回の枠組みには、次の具体的な分野が盛り込まれている。
- 炭素市場の発展:オフセットの質保証を含む価格メカニズムの強化
- クリーントランスポート:低炭素燃料やゼロエミッション車(ZEV)の普及拡大
- 大気質管理:排出源規制や監視体制の高度化、費用対効果分析の実施
- 教育と社会参加:気候教育や住民の参画を通じた「公正な移行」の促進
カリフォルニアは既に、デンマーク、中国、日本、カナダなど27か国・地域と同様の協力協定を結んでいる。特にブラジルとは2024年2月、21州が加盟する「コンソルシオ・ブラジル・ヴェルデ(CBV)」との包括的パートナーシップに調印しており、今回のMOUはその延長線上にある。
州政府による独自の国際協力は、連邦レベルの政治的停滞を補うだけでなく、カーボンクレジットや炭素除去(CDR)技術の導入を通じて国際市場での標準づくりに関与する戦略と位置付けられる。
カリフォルニアは2000年比で温室効果ガス排出量を20%削減しつつ、州GDPを78%成長させた実績を持つ。2023年には電力の約3分の2を再生可能エネルギーなどクリーン電源で賄い、一日の一部時間帯では100%クリーン電力を達成している。
ニューサム政権下での電力貯蔵容量は15,000メガワット超と約20倍に拡大しており、今後はブラジルとの協力を通じて森林由来のカーボンクレジットの品質確保と国際認証の整備が焦点になる見通しだ。