米B&Wが既存発電所にCCS技術を提供へ 年55万トンのCO2回収「SolveBright」採用

村山 大翔

村山 大翔

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米国オハイオ州に本拠を置くバブコック・アンド・ウィルコックス(Babcock & Wilcox Enterprises, Inc.、以下B&W)は2025年12月8日、米国内の既存発電所に対し、独自の二酸化炭素(CO2)回収技術「SolveBright」を提供するための限定的着工指示(LNTP)を受領したと発表した。

本プロジェクトは2026年3月までに最終的な本契約(FNTP)が締結される見通しで、初期の受注額は約8,000万ドル(約116億円)にのぼる。年間55万トン以上のCO2を回収・貯留する計画であり、北米で急増するデータセンターやAI工場の電力需要に対応するベースロード電源の脱炭素化を加速させる。

今回採用された「SolveBright」は、燃焼後の排ガスからCO2を分離・回収する再生型溶剤ベースの技術である。最大の特徴は運用の柔軟性にあり、特殊な高度溶剤だけでなく、市場で広く流通する汎用溶剤も使用できる設計となっている。これにより、発電所の運営者は市場環境に合わせて運用コストを最適化することが可能となり、長期的なプロジェクトの経済性を高めることが期待される。

B&Wのチーフ・コマーシャル・オフィサー(CCO)を務めるジミー・モーガン氏は「北米におけるAIインフラの急速な拡大に伴い、エネルギー生産者はCO2の回収・貯留(CCS)および有効利用(CCU)のためのソリューションを必要としている」と述べ、同社の技術的優位性を強調した。

本プロジェクトの規模は、年間55万トンという大規模なCO2削減を実現するものであり、カーボンクレジット市場における高品質な排出回避・除去由来のクレジット創出にも寄与する可能性がある。

B&Wはこれまで長年にわたり、産業部門向けに排ガス処理やスクラバー技術を提供してきた実績を持つ。同社は小規模から大規模まで幅広い燃焼後回収プロジェクトを支援しており、初期の調査や技術評価から、プラントの試運転、立ち上げまでを包括的にサポートする体制を整えている。

プロジェクトの進捗に関しては、2026年3月までに予定されている本契約の締結後、詳細な設計や長納期機器の調達が本格化する。B&Wは、今回の受注には将来的な建設サービスや追加のスコープ拡大も含まれる可能性があるとしており、事業規模がさらに拡大する余地を残している。同社はウェストバージニア州でも水素製造とCCSを組み合わせた「BrightLoop」プロジェクトに対して州政府から1,000万ドル(約14億5,000万円)の支援を受けるなど、脱炭素技術の社会実装を加速させている。

本ニュースは、生成AIの普及に伴う電力需要の爆発的増加が、図らずもCCS技術の商用化を強力に後押ししている現状を浮き彫りにした。これまで石炭やガスなどのベースロード電源は脱炭素の文脈で逆風にさらされてきたが、24時間稼働が求められるデータセンター向け電源として、CCSを付帯させた「低炭素化火力」への回帰が北米で顕著となっている。

特にB&Wの「SolveBright」のように、既存の発電設備に後付け(レトロフィット)が可能で、かつ汎用溶剤を使用できる柔軟性は、事業者の投資リスクを低減する。

日本企業にとっても、米国でのこうした大規模な点源回収プロジェクトの進展は、将来的なCCSクレジットの供給源として、あるいは同様の技術導入を検討する際の重要な先行事例となるだろう。2026年3月の正式契約以降、建設工程が予定通り進むかどうかが、同技術の信頼性を占う次の試金石となる。

参考:https://www.babcock.com/home/about/corporate/news/babcock-and-wilcox-receives-limited-notice-to-proceed-to-supply-co2-capture-technology-for-us-power-plant