Brineworks「CO2除去と水素生成の両立」へ前進 29億円の助成金獲得

村山 大翔

村山 大翔

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オランダのクライメートテック企業ブラインワークス(Brineworks)は9月17日、欧州イノベーション審議会(EIC)加速器から非希薄化型の助成金1,800万ユーロ(約29億円)の支給を受けると発表した。採択率6%未満の競争的な公募で選ばれたもので、同社が開発する「大気中からCO2を直接回収しながら、同時にグリーン水素を製造する」電解システムの実証展開を加速させる狙いだ。

今回の資金は、初のフルスケール実証プロジェクトに充当される。同社の特許取得済み電解装置は、太陽光や風力など変動型再エネ電源で稼働でき、安価で広く流通する素材を利用して海水を電解する仕組みである。運転中にCO2を大気から直接除去すると同時に水素を生成し、両者を合成してeメタノールや持続可能な航空燃料(SAF)といった合成燃料に転換できる。

共同創業者兼CTOのジョセフ・ペリーマン博士は「すでにCO2除去コストを1トン当たり100ドル(約1万4,700円)未満に抑えることに成功した」と述べ、カーボンクレジット市場における長年の目標水準に到達したと強調した。その上で「世界が待ち望んでいた閾値を突破した。これから本格的なスケールアップが始まる」と語った。

ブラインワークスは2024年にも気候特化型VCのペールブルードット(Pale Blue Dot)などから200万ユーロ(約31億円)の資金を調達済みで、今回の助成金はそれに続く成長資金となる。将来的にはモジュール型ユニットの量産を構想しており、炭素除去(CDR)の拡大と水素供給を両立させ、合成燃料市場への参入を狙う。

現在、多くの電気化学的直接空気回収(DAC)技術は研究室段階にとどまるか、コスト試算に依存している。そうした中で、実証段階に進みつつあるブラインワークスは「CDRと水素生成の二刀流」で頭角を現す新興企業と位置づけられる。今後は欧州域内での商業化に向け、2026年にかけて実証成果が注目される見通しだ。

参考:https://brineworks.tech/updates/brineworks-secures-eu2m-to-advance-carbon-removal-tech