世界初のセメント業界CO2回収貯留施設開業 年間40万トンCO2を回収しセメント原料に活用

村山 大翔

村山 大翔

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ドイツ建設資材大手のハイデルベルク・マテリアルズは6月18日、ノルウェーのブレヴィクにある同社セメント工場で、業界初の産業規模の炭素回収貯留(CCS)施設「Brevik CCS」を稼働した。施設は年間40万トンのCO2を回収・貯留し、工場の排出量の約半分を削減する。開所式にはノルウェーのホーコン皇太子やテリエ・オースラン・エネルギー相ら約320名が出席し、同社CEOのドミニク・フォン・アヒテン氏は「これは建設業界にとっての月面着陸だ」と強調した。

Brevik CCSは、ノルウェー政府の「ロングシップ」プロジェクトの一環で、CCSの完全な価値連鎖構築を目指す欧州初の取り組みだ。同施設はすでにCO2の回収・液化を開始し、提携先のNorthern Lights JVが6月からオイガルデンにある一時貯留拠点への輸送を始めている。

CEOのアヒテン氏は開所式で、「数年前まで産業規模のCCSは不可能と考えられていたが、我々はそれを覆した」と述べた。同氏はまた、この施設から回収されたCO2を利用した、世界初の炭素回収セメント「evoZero」の欧州向け販売を今後開始する方針も明らかにした。

建設には約120万時間の作業が投入され、最大400名の技術者や外部パートナーが参加した。40万トンのCO2削減効果は、航空機のフランクフルト・ニューヨーク間往復便に換算すると約15万便分の排出量に相当する。

業界内では、ハイデルベルクの動きを契機に、他企業もCCS技術の採用検討が加速すると予測される。EUでは2030年までに建設業界全体で排出削減義務の強化が見込まれ、Brevik CCSの稼働はその試金石となる可能性が高い。

ハイデルベルクは今後、欧州各地の顧客へevoZeroを供給し、市場での受容度を高めていく。業界の注目は、この技術が世界的な標準となるかに集まっている。

参考:https://www.linkedin.com/posts/heidelbergmaterials_opening-of-ccs-facility-in-norway-marks-new-activity-7341144467011215360-yt8y