ブラジル主導の「排出量取引市場連合」がCOP30で拡大 18カ国参加、日本は参加見送り

村山 大翔

村山 大翔

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ブラジルは11月15日、COP30の開催地であるベレンで、「コンプライアンスカーボン市場に関する開かれた連合(Open Coalition on Compliance Carbon Markets)」のハイレベル会合を招集し、欧州連合(EU)、中国、英国、カナダ、ノルウェーを含む18カ国・地域の参加を得て、同連合の拡大を確認した。この連合は、異なる各国の排出量取引制度(ETS)などコンプライアンスカーボンクレジット取引システム間の共通基準を確立し、相互接続を通じて市場の流動性、予測可能性、透明性を高めることを目指す。

このイニシアティブは、11月7日にベレンの気候サミットで発足したもので、自主的な参加を原則とする。ブラジル外務省のマウリシオ・リーリオ気候・環境担当事務次官は、「このイニシアティブは、コンプライアンスカーボンクレジット市場が、各国経済の脱炭素化を加速させ、パリ協定の実施を推進する上で中心的な役割を果たすとの認識に基づいている」と説明し、「環境の健全性を維持しつつ、公正な移行を確保しながら、コンプライアンスカーボンクレジット市場をてこ入れすることが我々の目標だ」と述べた。

本連合は、ブラジル財務省の主導で進められており、ラファエル・ドゥブー次官補がその取り組みを代表している。ドゥブー次官補は、「化石燃料からの移行を構造化され、秩序ある、公平な方法で議論しており、コンプライアンスカーボンクレジット市場はその目標を達成するための不可欠な道筋の一つである」と指摘した。

ドゥブー次官補はさらに、この連合が、測定・報告・検証(MRV)のベストプラクティス定義、共通の会計基準の確立、そしてオフセットメカニズムの健全性確保に関して、各国が協力することを可能にする点を強調した。同氏は、カーボンクレジット市場の規制は、脱炭素化を推進する最も効果的な手段の一つであると繰り返し述べた。

この連合には現在、ブラジル、中国、欧州連合(EU)、英国、カナダ、チリ、ドイツ、メキシコ、アルメニア、ザンビア、フランス、ルワンダ、アンドラ、ギニア、ニュージーランド、モナコ、シンガポール、ノルウェーが参加している。

欧州連合(EU)のダン・ヨーゲンセン気候変動担当委員は、質の高いカーボンクレジットの使用はパリ協定の下で確立された基準と原則に合致しなければならないとの考えを示した。「この連合は、関連する基準を最終的な国別目標や国内炭素市場の設計に完全に統合するためのベンチマークを確立できる」と述べ、ブラジルや他の国々との連携を通じて効果的な炭素価格設定を確保する意向を表明した。

今回正式に参加したノルウェーのアンドレアス・ビェルランド・エリクセン気候・環境大臣は、ノルウェーが排出量取引制度、炭素市場、パリ協定に参加しており、これら全てが排出量削減のための主要な手段であると強調した。同氏によると、連合は経験の共有、MRVと炭素会計手法に関する知識の拡大、そして効果的な気候影響の確保を通じて、環境の健全性を強化する。今後、参加国間での具体的なMRV基準と相互接続に関する議論が加速する見通しだ。

参考:https://cop30.br/en/news-about-cop30/carbon-market-coalition-welcomes-18-member-countries-at-cop30