住民への恫喝と土地剥奪が浮き彫り ブラジルREDD+事業の認証中止を先住民団体らが要求

村山 大翔

村山 大翔

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ブラジル・アマゾン州で進められている森林保護を通じたカーボンクレジット創出プロジェクト「メジュルアREDD+」を巡り、先住民や女性団体らで構成される連合体が2025年12月22日、事業主体による深刻な人権侵害を糾弾する声明を発表した。

声明では、事業主体のビーアール・アルボ・ジェスタォン・フロレスタル(BR Arbo Gestão Florestal S.A.)による住民への脅迫や土地の強制的な囲い込みが指摘されており、国際的なカーボンクレジット認証機関であるベラ(Verra)に対してプロジェクトの即時承認取り消しを強く求めている。

本プロジェクトは、アマゾン州のカラウアリ、ジュタイ、ジュルアの3自治体にまたがる約90万ヘクタールの土地を対象としており、そのうち約12万3,762ヘクタールで「森林減少・劣化からの排出削減(REDD+)」事業が展開されている。

ビーアール・アルボは将来的に事業面積を約67万ヘクタールまで拡大する計画を立てているが、対象地域内にはリオジーニョ地区をはじめとする10の伝統的コミュニティが存在し、50年以上にわたりゴム採集やアサイーの収穫などで生計を立ててきた背景がある。

現地住民の代表組織である低リオジーニョ住民協会(ASMOBRI)の報告によれば、事業主体は「自由意思に基づく、事前の、十分な情報提供による同意(FPIC)」という国際的な原則を無視し、住民に対して個別の家庭訪問による署名の強要や、法的手段を盾にした恫喝を行っている。特に、プロジェクトに従わない住民を「来年から地域から追放する」といった直接的な脅しや、伝統的な生活を維持できないほど狭小な土地(約8ヘクタールなど)への押し込めが常態化しているという。

法的側面では、アマゾン州連邦検察庁(MPF)が2025年第1勧告を出し、ビーアール・アルボ社とベラに対し、当該プロジェクトの即時停止を勧告した。これを受けてベラは同年4月に一度は登録申請を却下したものの、7月にその決定を覆し、現在は再び承認待ちの状態となっている。声明に参加した女性団体らは、ベラがこれらの人権侵害の報告に対し沈黙を守っていることを厳しく批判し、自然を金融商品化するREDD+の枠組みそのものが地域コミュニティを破壊していると訴えた。

今後、ブラジル政府による伝統的領土の公的承認手続きが進む中で、カーボンクレジット事業の正当性が司法の場で改めて問われることになる。ベラが最終的にどのような判断を下すか、またブラジル連邦検察庁がさらなる法的措置に踏み切るかが、今後のアマゾンにおける自然由来クレジット市場の信頼性を左右する焦点となる。

本ニュースは、ボランタリーカーボン市場(VCM)が直面している「質の担保」と「人権リスク」の根深さを改めて浮き彫りにした。これまで多くのNbS(自然に根ざした解決策)プロジェクトが、地権者と居住者の権利関係が曖昧な地域で強行され、批判を浴びてきた経緯がある。

特筆すべきは、最大手の認証機関であるベラの対応が揺れている点だ。

一度却下した案件を数ヶ月で再審査へと戻した判断は、市場の透明性を重視する投資家にとって極めてネガティブなシグナルとなる。

現在、世界的に高インテグリティなクレジットが求められる中、このような人権侵害の疑いがあるプロジェクトのクレジットが流通すれば、それを購入した企業のレピュテーションリスクは計り知れない。

日本企業にとっても、ブラジル等の海外プロジェクトから創出されたクレジットを調達する際は、単なる「認証済み」というラベルだけでなく、現地のコミュニティとの合意形成プロセスを独自にデューデリジェンス(適正評価)する必要性が一段と高まっている。

参考:https://www.wrm.org.uy/action-alerts/brazil-no-to-the-redd-mejurua-project-in-the-state-of-amazonas