「航空脱炭素化の最善策はCDR」Boeing、Charmと10万トンCO2のカーボンクレジットオフテイク契約

村山 大翔

村山 大翔

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航空宇宙大手ボーイング(Boeing)は、気候テックスタートアップのチャーム・インダストリアル(Charm Industrial)と、二酸化炭素(CO2)10万トンを隔離するオフテイク契約を締結した。これは、ボーイングが意欲的に進めるサステナビリティ戦略の一つであり、化石燃料からの転換に苦慮する商用航空部門において、持続可能な航空燃料(SAF)への投資と並行して炭素除去(CDR)技術を組み合わせる実用的なアプローチを明確に示した。

CDR技術の「バイオオイル地下貯留」を航空部門の脱炭素化に活用

この契約に基づき、チャーム・インダストリアルは、農業および林業の残渣を熱処理によって濃密な液体であるバイオオイルに変換するプロセスを採用する。このバイオオイルは、燃焼させることなく、枯渇した油井などを含む地中深くに注入され、数世紀にわたり安定的に貯留される仕組みである。このアプローチは、よりスケーラブルなグリーン燃料代替案が実用化されるまでの間、排出量オフセットへの圧力が高まる企業に対し、具体的な解決策を提供する。

ボーイングは、CO2隔離をコスト効率の高い代替手段とみている。この契約は、同社が「新興の炭素除去技術」と「SAFへの長期投資」を組み合わせる戦略を重視していることを示している。

航空業界で高まるCDR需要、市場は2050年までに600億ドル規模へ

航空業界におけるCDRの需要は再び高まりを見せており、2023年にはライバルであるエアバス(Airbus)がワンポイントファイブ(1PointFive)と40万トンCO2の除去に関する取引を結ぶなど、大手企業のCDR市場への参入が続いている。

アナリストの試算では、航空業界がネットゼロ排出量目標を達成するためには、2050年までに少なくとも600億ドル(約9兆2,700億円)相当のカーボンオフセットが必要になるとされている。チャーム・インダストリアルのようなスタートアップにとって、この巨大な市場は、CDRクレジットに完全に依存することなく収益性の高い事業機会を生み出す。

コストを「1トンあたり50ドル」に大幅削減する目標

チャーム・インダストリアルは以前、事前市場コミットメントであるフロンティア(Frontier)に対し、約5,300万ドル(約82億円)で112,000クレジットを販売した実績がある。しかし、同社は今後、CDRコストを現在の1トンあたり470ドル(約7万2,650円)から、1トンあたり約50ドル(約7,728円)へと劇的に削減することを目指している。

このコスト削減が実現すれば、CDR技術のより広範な採用が解き放たれる可能性がある。ボーイングは、チャーム・インダストリアルの地下貯留アプローチを活用することで、現在の排出量と将来的なグリーン燃料の普及とのギャップを埋めることを期待している。この提携は、航空業界にとって脱炭素化の最善策の一つとして、より多くのCDRが関わるべきだという明確なシグナルを送るものだ。

参考:https://www.linkedin.com/messaging/thread/2-ZGViYmVhODUtNzBiYi00MmJjLWI4ZGMtMmE1NTJmMWY4M2U1XzEwMA==/