女性主導の炭素除去(CDR)企業バイオソーラ(BIOSORRA)は10月7日、気候変動対策ファンドのアトモスフェア(atmosfair)およびフォンデ・ニンバス(Fondo Nimbus)が主導するシード資金調達ラウンドで350万ドル(約5億3,000万円)を獲得したと発表した。調達資金は、ケニア国内でのバイオ炭生産拡大と、地域農家による再生型農業の推進、そして永続性の高いCDRカーボンクレジットの創出に充てられる。
「今回の調達は、当社のCDRアプローチが国際的に評価された証だ」とバイオソーラの共同創業者兼CEOイネス・セラ・バウセルス氏は述べ、「atmosfairとFondo Nimbusの支援を得て、科学的・技術的基盤を強化し、熱帯地域で持続可能な農業と土壌再生のレガシーを築きたい」と語った。
バイオソーラは、熱帯作物の残渣を利用する独自技術により、市場でも最も高品質な「CDR効率」を実現している。アトモスフェアの最高技術責任者(CTO)フィリップ・ネフ氏は、「このプロジェクトでは、持続可能なバイオマス廃棄物からバイオ炭を製造し、炭素を固定化するだけでなく、小規模農家の所得向上と食料安全保障にも寄与する」と述べた。さらに、バイオ炭製造過程で発生するエネルギーを再利用することで、事業運営を自立的に維持し、ケニアのエネルギー構造の脱炭素化にも貢献するという。
一方、Fondo NimbusのCEOジョセフィン・コレイン氏は「バイオソーラは、新興国におけるバイオ炭生産のリーダーとして大きな成長余地を持つ」と指摘し、「農業企業、カーボンクレジット購入者、農家という3者の利益を融合させたビジネスモデルが、環境・社会の両面で持続的なインパクトを生み出している」と評価した。
バイオソーラは2025年、ICROAからCDRカーボンクレジットの認証を取得した。ケニア国内の産業企業としては初の事例であり、その高品質で長期的なCO2除去効果が認められた形だ。
また、同社はすでに24時間稼働体制を確立し、稼働開始から1年以上が経過。これまでに20種類以上の作物でバイオ炭の利用実証を進め、土壌改良とCO2固定の両面で顕著な成果を示している。
バイオソーラはこれまでに、XPRIZEカーボンリムーバル、ベゾス・アース・ファンド、MITソルブ、ムラゴ財団など、世界的機関から支援を受けてきた。女性主導の企業として、熱帯農業廃棄物の「気候資源化」を目指しており、今後10年間でギガトン規模の耐久的炭素除去を目標に掲げている。
今回の資金調達により、同社は研究開発や測定・報告・検証(MRV)体制をさらに強化し、トレーサブルで高品質なカーボンクレジット供給を拡大する構えだ。