ドイツ化学大手のBASFは8月25日、インド農業研究評議会中央稲研究所(ICAR-CRRI)と提携し、水田からの温室効果ガス(GHG)排出削減を目的とした2年間の実証試験を開始した。試験はオディシャ州とジャールカンド州で行われ、間断灌漑(Alternate Wetting and Drying、AWD)の導入効果を検証する。
AWDは水田を定期的に排水することで、メタン排出削減と水資源節約を両立できる手法だ。だが土壌の通気性が高まることで雑草が増える課題がある。今回の試験では、除草剤耐性(HT)品種の稲を組み合わせることで、農家が効率的に雑草を抑制しつつ収量を維持できるかを検証する。
BASFアジア太平洋農業ソリューション部門上級副社長のシモーネ・バーグ氏は「炭素削減には科学に基づく新技術の組み合わせが不可欠だ。ICAR-CRRIとの協力は、農家に実効性のある解決策を届けるものだ」と述べた。
この取り組みは、BASFが推進するアジア太平洋地域のカーボンファーミング計画の一環で、国際認証機関Verraの稲作向け手法「VM0051」に沿ったカーボンクレジット創出の可能性も探る。BASFは世界全体で稲作由来のGHG排出を30%削減する目標を掲げており、今回の実証はその達成に向けた重要な一歩となる。
ICAR-CRRIのガナパティ・アナンダ・クマール所長は「農家は限られた水で稲を栽培でき、栽培コストを下げられる。さらに将来的にはメタン削減を通じてカーボンクレジット取引から追加収益を得られる可能性がある」と指摘した。同研究所は気候変動に強い除草剤耐性品種「CR Dhan 807」「CR Dhan 812」をすでに開発している。
今回の実証は2027年まで続けられ、削減量が定量化されればインド農家がカーボンマーケットに参入する道が開かれる可能性がある。