BASFとANDRITZ デンマーク・オーフスで年43万トンのCO2を回収へ 廃棄物発電と化学技術の融合で最大規模のCCS計画

村山 大翔

村山 大翔

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デンマーク中部の都市オーフスで、独化学大手BASFとオーストリアのエンジニアリング企業アンドリッツ(ANDRITZ)が、廃棄物発電所から年間約43万5,000トンの二酸化炭素(CO2)を回収する大規模カーボンキャプチャー事業を開始する。両社は10月23日、BASFのガス処理技術「OASE(オアゼ)® blue」を用いるライセンス契約を締結した。オーフス市が掲げる「2030年までのカーボンニュートラル達成」に向け、欧州の脱炭素政策を象徴する案件となる見通しだ。

アンドリッツは本計画の炭素回収プラントの主要サプライヤーに選定されており、現在、基本設計(プリエンジニアリング)を進めている。実装段階への移行は、デンマーク政府が設立した「CCS基金」からの資金承認を得られるかどうかに左右される。

廃棄物発電の排ガスを対象 高効率・低エネルギー消費の化学処理

協定に基づき、アンドリッツはBASFの溶剤系CO2吸収システム「OASE blue」を発電所の排ガス処理工程に統合する。同技術は、廃棄物燃焼や産業用ボイラーなどの複雑な排ガス組成にも対応できるよう設計されており、エネルギー効率の高さと溶剤損失の少なさが特徴だ。

アンドリッツ・クリーンエアテクノロジーズの副社長クラウス・ベアーンターラー氏は「BASFとの協働により、廃棄物管理分野で持続可能性を高める革新的な炭素回収ソリューションを提供できる」と述べた。

また、BASFインターミディエーツ事業部欧州統括上級副社長のヴァシリオス・ガラノス氏は「化学とエンジニアリングの融合が、排ガス処理の複雑な課題に対処する鍵である」と指摘し、「OASE blueの柔軟性と持続可能なガス処理への貢献を示すものだ」と強調した。

デンマーク最大の都市型CCSへ 世界500超の実績が支える技術力

BASFのOASE技術は、発電、セメント、精製など世界500か所以上のプラントで導入されており、ポストコンバッション(二次燃焼後)型のCO2回収分野で高い評価を得ている。今回のオーフス計画は、実現すればデンマーク最大の自治体主導型CCSプロジェクトとなる。

オーフス市は既に「CO2排出実質ゼロ都市」を掲げ、廃棄物発電の脱炭素化を中心に再生可能エネルギー導入を進めている。本計画により、廃棄物発電由来のCO2を回収・貯留(CCS)し、削減分をカーボンクレジットとして活用する構想も浮上している。

両社は今後、資金決定を経て2026年内の正式着工を目指すとみられる。欧州全体でのCDR市場の拡大に向け、化学・機械両分野の協働が新たなモデルケースとなる可能性がある。

参考:https://www.basf.com/global/en/media/news-releases/2025/10/p-25-215