航空業界、炭素除去(CDR)に活路 「2050年ネットゼロ」へCDR市場

村山 大翔

村山 大翔

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世界の航空業界が掲げる2050年までの二酸化炭素(CO2)排出実質ゼロ(ネットゼロ)に向け、炭素除去(CDR)が不可欠な手段として位置づけられ始めている。国際航空運送協会(IATA)は8月、直接空気回収(DAC)大手のクライムワークス(Climeworks)などと連携し、航空分野におけるCDR活用の可能性をまとめた新たなガイドを公表した。

ガイドは、DACやバイオ由来の除去手法など、CDRの技術群を整理し、航空燃料の持続可能化に直結する役割を強調している。捕集したCO2は、合成燃料「パワー・トゥ・リキッド(PtL)」の原料として再利用できるため、持続可能な航空燃料(SAF)の供給拡大にもつながると指摘した。

もっとも、CDR市場はまだ黎明期にあり、拡張性、規制整合性、コスト効率といった課題が残る。報告書は、排出削減策との違いや政策上の位置づけを解説するとともに、CDR由来のカーボンクレジット生成から認証、取引に至る仕組みを明確化した。市場活動は全体的に増加傾向にあるが、技術ごとにクレジットの引き渡し量には大きな差が見られるという。

IATAのカーボンキャプチャー担当アシスタントマネージャー、ラバブ・メナズ氏は「CDRは2050年に残存するCO2排出を相殺するために不可欠であり、航空業界はその市場形成に積極的に関与する必要がある」と強調した。

CDR市場の主要な関係者には、航空会社や技術開発企業だけでなく、規制当局、投資家、炭素市場の運営者も含まれる。報告書は、こうした多様なステークホルダーの連携が、現行の障壁を乗り越え、成長を加速させる鍵になると指摘した。

航空業界はすでに国際民間航空機関(ICAO)のカーボン・オフセット・削減制度(CORSIA)に基づき、カーボンクレジットの活用を進めている。今回のガイドは、CDRをその補完的手段として組み込み、将来の燃料供給や市場制度と接続させることで、長期的なネットゼロ達成を現実的な道筋に位置づけた。

IATAは「今後数年で市場の成長を迅速に進めなければ、2050年目標の達成は困難になる」とし、航空バリューチェーン全体での協調行動を呼びかけた。

参考:https://www.iata.org/en/publications/economics/reports/a-guide-to-the-carbon-dioxide-removals-cdr-market/