オーストリア政府は2026年2月18日、米国産液化天然ガス(LNG)への依存を減らし、アフリカ産天然ガスの輸入拡大と再生可能エネルギーへの投資を最優先する方針を明らかにしたとロイター通信が報じた。
クリスティーナ・ツェヘトナー(Christina Zehetner)エネルギー事務次官が述べたもので、ロシア産ガスからの脱却後、新たな供給網の構築を急ぐ欧州において、より安価で持続可能なエネルギーポートフォリオの構築を目指す。
多角化戦略の柱とCDRへの波及効果
同国は今後、イタリアを経由する「トランスメッド・パイプライン(Transmed pipeline)」を活用し、アフリカからのガス輸入を増強する。また、オーストリアのエネルギー大手「OMV(OMV AG)」が主導するルーマニア・黒海沖の「ネプトゥン・ディープ(Neptun Deep)」ガス田が2027年に生産を開始する予定であり、域内調達の強化も進める。
この戦略の背後には、米国のクリス・ライト(Chris Wright)エネルギー長官による米国産LNG購入拡大の圧力がある。しかし、ツェヘトナー氏は、再生可能エネルギーこそが「低コストで自国調達可能な信頼できる代替案」であると強調した。これは、化石燃料依存からの完全脱却を目指す長期目標に合致する。
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炭素市場とエネルギー転換の定量的背景
オーストリアは現在、ノルウェー、米国、カタールなどからエネルギーを調達しているが、長期的にはすべての化石燃料輸入を停止する方針だ。同国はEU-ETSの下、厳しい排出削減義務を負っており、ガス供給源の転換と並行して、バイオエネルギー起源の炭素回収・貯蔵(BECCS)や直接空気回収(DAC)といったCDR技術への投資を加速させている。
天然ガス供給網の維持は、将来的に水素キャリアとしての活用や、燃焼時に発生するCO2を回収するCCSプロジェクトと密接に関連する。特にネプトゥン・ディープ計画のような大規模開発には、カーボンクレジットを活用したオフセット戦略や、排出枠の確保が不可欠な論点となっている。
ツェヘトナー氏はロシア産ガスについて、「教訓は学んだ」としつつも、ウクライナ側が受け入れ可能な和平合意がなされた場合には、将来的な再考の余地を否定しなかった。しかし、現在の主眼はあくまで「脱ロシア・脱米国」によるエネルギー主権の確立にある。
今後は、アフリカ諸国とのエネルギー協力におけるメタン漏洩対策や、それらに付随する高品質なカーボンクレジットの創出が、オーストリアの気候変動対策の鍵を握ることになる。
オーストリアの「脱米国LNG」への動きは、エネルギー安全保障をカーボンニュートラル戦略に直結させる欧州の強い意志を示している。日本企業にとっては、アフリカや東欧での再エネ・CDRインフラ整備に伴う技術供与や、欧州基準に準拠した高品質なカーボンクレジット取引の拡大が、新たな商機となるだろう。
