オーストラリア政府系銀行らが植林プロジェクトに81億円規模を投資 先住民主導の国内最大級CDR事業が始動

村山 大翔

村山 大翔

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オーストラリア政府系のクリーンエネルギー金融公社(Clean Energy Finance Corporation (CEFC))と投資会社のリバー・キャピタル(River Capital)は2月4日、ノーザンテリトリー準州ティウィ諸島における先住民主導の植林カーボンプロジェクトに対し、総額約8,100万豪ドル(約81億円)を共同投資すると発表した。

本事業は、オーストラリア国内最大級の自然ベースの炭素除去イニシアチブとなる見通しである。40年間のプロジェクト期間を通じて、約500万トンのオーストラリア・カーボンクレジット(ACCU)の創出を目指す

今回の投資において、政府系銀行のCEFCは最大4000万豪ドル(約40億円)を拠出し、残額をリバー・キャピタルが負担する。事業の舞台となるのはダーウィンの北約80キロメートルに位置するメルビル島で、約3万ヘクタールにわたってクイーンズランド州北東部原産のユーカリ(Eucalyptus pellita)を植林する計画だ。この事業は、同地域の8つの氏族で構成されるティウィ・プランテーション公社(Tiwi Plantations Corporation)が所有・運営し、植林管理会社のミッドウェイ(Midway Pty Ltd)が実務を担う。

CEFCのナチュラル・キャピタル部門責任者であるヒーチュン・ソン氏は、「この投資は、先住民コミュニティがエネルギー移行に経済的に参加できるよう支援するものだ。持続可能な林業はオーストラリアの低炭素な未来において重要な役割を果たし、Indigenous(先住民族)との有意義な協力のための新しい商業投資モデルを構築する」と述べた。また、更新された「植林林業手法(Plantation Forestry Method)」に基づく今回の取り組みは、在来種を用いた森林エコシステムの回復と、長期的で質の高い炭素除去を実現するユニークな機会であると強調した。

プロジェクトの収益源はカーボンクレジットだけにとどまらない。

成長した立木は持続可能な建築資材などの高付加価値な木材製品として活用され、約1,200万立方メートルの供給を見込んでいる。これにより、建設分野での長期的な炭素固定を促進すると同時に、天然林への依存を減らす効果も期待されている。ミッドウェイのトニー・マッケンナ最高経営責任者(CEO)は、「すでにクリーンエネルギー規制当局(Clean Energy Regulator)に対し、プロジェクト全体のうち約86万5,000単位のACCU創出に関する初期段階の登録を完了した」と指摘した。

オーストラリア政府は、2035年までに温室効果ガス排出量を62〜70%削減する(2005年比)という野心的な目標を掲げている。本プロジェクトによる3万ヘクタールの植林は、同国の総植林面積を約2%拡大させる規模であり、国家目標の達成に向けた重要な一翼を担う。ティウィ・プランテーション公社のキム・プルンタタメリ会長は、「次世代のために土地をしっかり守らなければならない。外部の人々と協力し、ティウィの知識と文化を孫の代へ引き継いでいくことが最も重要だ」と述べ、環境保全と文化継承の両立に意欲を示した。

今回のニュースは、オーストラリアにおけるカーボンクレジット市場(ACCU)が、単なる排出オフセットの手段から「先住民族の経済的自立」と「産業育成」を統合した高度なESG投資へと進化していることを象徴している。

特筆すべきは、政府系金融のCEFCが民間投資を呼び込む「呼び水」となり、大規模な自然由来の炭素除去(CDR)プロジェクトを組成した点だ。

今後は「単に二酸化炭素を吸収する」だけでなく、本件のような「生物多様性への配慮(在来種の使用)」や「社会的インパクト(先住民支援)」といった付加価値が、クレジットの価格や評価を左右する重要な指標になるだろう。

参考:https://www.cefc.com.au/media/media-release/cefc-and-river-capital-commit-81m-towards-australia-s-largest-first-nations-led-carbon-initiative/