オーストラリア連邦政府は11月28日、同国のカーボンクレジット制度「オーストラリア・カーボン・クレジット・ユニット(ACCU)」において、埋立地ガス(LFG)からのメタン排出削減に関する新たな方法論を施行した。新手法では、カーボンクレジット創出の基準となる「ベースライン(基準線)」を年々厳格化する仕組みを導入し、既存プロジェクトに対し継続的な設備投資と回収率の向上を促すことで、クレジットの環境十全性(インテグリティ)を強化する狙いだ。
今回の改定は、イアン・チャブ教授(Professor Ian Chubb AC)が主導したACCU制度に関する独立レビュー(通称:チャブ・レビュー)の勧告を直接的に反映したものである。同レビューでは、埋立地ガス事業による削減効果は時間の経過とともに向上すべきであるとの見解から、クレジット発行期間の延長には「右上がりのベースライン(upward sloping baselines)」、すなわち基準値の段階的な引き上げを組み込むべきであると結論付けていた。
新手法の核心は、事業者がACCUを獲得できる「閾値」の引き上げにある。ベースラインとは「ACCUのインセンティブがなくとも通常行われるであろう対策レベル」を示しており、事業者はこの基準を超えて回収・破壊したメタンについてのみクレジットを受け取ることができる。 新手法の下では、このベースラインが毎年0.5%ずつ上昇する。具体的な開始時点のベースライン設定は以下の通りである。
- 発電設備を持つ既存プロジェクト:40%
- 発電設備を持つ新規プロジェクト:37%
- フレアリング(燃焼処理)のみを行うプロジェクト:30%
なお、追加的な障壁に直面する小規模および地方の埋立地におけるフレアリングのみのプロジェクトについては、例外的にベースラインが0%に設定される。また、州や準州の許認可要件ですでに高い回収率が義務付けられている場合や、旧手法でより高いベースラインが設定されていた場合は、それらの高い数値が適用される。
この制度変更により、既存のプロジェクトがこれまでと同数のACCUを獲得し続けるためには、メタン回収量を増やし続けることが求められる。一方で、上昇するベースラインを満たすための継続的な投資を実証できるプロジェクトに対しては、クレジット発行期間(クレディティング・ピリオド)の延長が認められる仕組みとなっており、長期的な排出削減インフラへの投資を促進する設計となっている。
ジョシュ・ウィルソン気候変動・エネルギー補佐大臣は、この新手法について次のように述べた。 「新しい埋立地ガス手法は、独立したチャブ・レビューの勧告を実現する上での重要なマイルストーンだ。この手法は、埋立地ガスプロジェクトから創出されるACCUの継続的な完全性を保証し、廃棄物部門の排出量削減におけるオーストラリアの世界的なリーダーシップを維持するものだ」
プロジェクトの申請は、クリーンエネルギー規制当局にて受け付けが開始されている。
