オーストラリア、カーボンクレジット制度を刷新 「提案主導型」で新手法開発を加速

村山 大翔

村山 大翔

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オーストラリア政府は、カーボンクレジット制度「オーストラリアン・カーボンクレジット・ユニット(ACCU)スキーム」の新手法開発プロセスを改定し、民間主体による「提案主導型(proponent-led)」方式を導入した。これは、2023年に実施された「ACCU制度独立レビュー(ACCU Review)」の勧告を踏まえたもので、従来の政府主導型開発から大きく転換する動きである。

新制度の下では、炭素削減や炭素除去(CDR)につながる新しい方法論(メソッド)の優先順位を、オープンな公募を通じて決定する。公募では、環境省の助言機関である排出削減審査委員会(ERAC:Emissions Reduction Assurance Committee)が提出された提案を審査し、法定基準である「排出削減の真正性基準(Offsets Integrity Standards)」および選別基準(トリアージ基準)に照らして評価する。その上で、どのメソッドを正式に策定すべきかについて大臣に勧告を行う。

2024年に初回のEOI(意向表明)募集が実施され、今後の募集時期については政府ウェブサイトで随時発表される予定だ。ERACによる審査を経て、最終的に承認されたメソッドはカーボンクレジットの発行対象となる。

新方式は、以下の5段階で構成されている。

  1. 新メソッドのアイデア登録(常時受付)
  2. EOIの正式提出(募集期間中)
  3. メソッド案の詳細開発
  4. 公開協議(Public Consultation)
  5. 最終的なメソッド確定

提案者は、開発中のテンプレートやガイドラインに関する改善提案も受け付けており、環境・気候・水資源省(DCCEEW)への意見提出が可能である。

今回の改革は、民間企業や研究機関が自主的にCDR技術やカーボンクレジット創出プロジェクトを提案しやすくする制度基盤を整えるもので、特に土壌炭素貯留やバイオ炭、ブルーカーボンなど新興分野でのメソッド策定が加速することが期待される。

参考:https://www.dcceew.gov.au/climate-change/emissions-reduction/accu-scheme/developing-new-methods