国連機関が「吸収量の反転リスク」管理ルールを承認 パリ協定第6.4条下で初の方法論採択へ

村山 大翔

村山 大翔

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国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の下でパリ協定第6.4条メカニズム(PACM)の運営を担う監督理事会(Article 6.4 Supervisory Body)は、10月10日にボンで開かれた第18回会合で、炭素除去量の「反転リスク(reversal risk)」に関する包括的ルールを採択した。これにより、吸収・貯留された温室効果ガスが後に再放出された場合の責任と補償手続きを制度的に明確化した。

監督理事会議長のマーティン・ヘッション氏は、「科学に基づく堅固な基準にたどり着いた。長期的な実効性を確保しつつ、現実的な解決策を盛り込んでいる」と述べ、「利害関係者が高水準の基準実現に向けて積極的に関与してほしい」と呼びかけた。

新ルールでは、炭素除去プロジェクトの貯留期間中に発生し得るリスクを継続的に監視し、プロジェクト参加者や投資家にリスク管理を促す保険プール制度を導入する。また、早期返済や第三者への保証移転といった選択肢も規定し、損失補償を科学的根拠に基づいて行う体制を整備した。

今回の会合では、炭素クレジットの追加性を評価するための「共通慣行分析ツール」も採択された。さらに、検証・認証を行う4つの新たな独立審査機関(DOE)が認定され、総数は10機関となった。

続く第19回会合(10月29〜30日、オンライン)では、メソドロジー専門家パネル(MEP)が勧告した5つの技術文書の採択が議題となる。これには、「投資分析ツール」や「埋立ガスの燃焼・利用方法論」などが含まれ、パリ協定クレジット制度で初となる方法論承認が見込まれている。MEPはまた、各国・セクターごとの資本コストデータを定期更新する枠組みも提案しており、炭素プロジェクトの経済的妥当性評価をより精緻化する狙いがある。

今後は、11月のCOP30で監督理事会の年次報告が正式審議される予定で、加盟国が運用方針や指針を追加決定する見通しだ。PACMの制度化が進むことで、炭素除去クレジットの「環境的完全性」確保と国際市場での信頼性向上が期待される。

参考:https://unfccc.int/a64-news#__25-Newsletters