オランダ・ロッテルダム発、欧州最大級の二酸化炭素回収・貯留(CCS)プロジェクト「アラミス(Aramis)」が、北海に敷設予定の約200キロメートルの海底CO2輸送パイプライン建設に向け、EU域内で資材供給の国際入札を開始した。入札は国営エネルギー企業EBNとガスインフラ事業者ガスユニー(Gasunie)が共同で実施する。
このパイプラインは、ロッテルダム港のマースフラクテ工業地帯と北海の指定貯留サイトを結ぶもので、年間最大2,200万トンのCO2を輸送できる見通しだ。稼働後は欧州の産業排出削減における「幹線」的存在となることが期待されている。
アラミス計画は、石油大手シェル(Shell)とトタルエナジーズ(TotalEnergies)が主導する炭素回収バリューチェーンの中核を担う。パイプラインはオープンアクセス型の共用インフラとして設計されており、初期利用企業に加え、今後の産業クラスターによる長期的な脱炭素需要にも対応可能な拡張性を備える。
次段階では、幹線敷設、陸上施設建設、接続拠点「D-HUB」製作、バルブなど主要装置供給を対象とした追加入札が予定されている。これら一連の発注案件は、欧州で現在進行中のCO2輸送インフラ構築の中でも最大級規模となる見通しである。
アラミスは欧州委員会の「共通利益プロジェクト(PCI)」に指定されており、EUの「コネクティング・ヨーロッパ・ファシリティ(CEF)」から資金支援を受けている。これは、越境的な排出管理インフラの整備を加速するEU戦略における重要拠点であることを示している。
プロジェクトは2026〜27年の最終投資決定(FID)を目指しており、順調に進めば2030年の運転開始が見込まれる。これはオランダおよびEUが2035年までにCO2回収・貯留能力を拡大する方針と軌を一にする。
欧州全体でCO2輸送ネットワークの整備が進む中、アラミスは北西ヨーロッパの産業集積地が海上貯留へアクセスするための基盤となり、地域全体の気候目標達成に向けた中核プロジェクトとして注目を集めている。
参考:https://www.aramis-ccs.com/news/aramis-opens-tendering-procedure-for-offshore-pipeline/
