CO2からEV電池用「黒鉛」を製造 サウジアラムコ傘下VCが米ホメオスタシスへ戦略出資

村山 大翔

村山 大翔

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サウジアラビアの国営石油大手サウジアラムコ(Saudi Aramco)のベンチャー育成部門であるラブセブン(LAB7)は、二酸化炭素(CO2)を蓄電池用合成黒鉛に変換する技術を持つ米スタートアップ、ホメオスタシス(Homeostasis)への戦略的出資と提携を発表した。

この提携により、産業由来の排出ガスを電気自動車(EV)向けリチウムイオン電池の負極材として高付加価値化する「炭素回収・有効利用(CCU)」の商業化を加速させ、持続可能なサプライチェーンの構築を目指す。

ワシントン州を拠点とするホメオスタシスは、独自の溶融塩電解技術を用いて、製油所や化学工場から回収されたCO2を純度の高い合成黒鉛へと転換するプロセスを開発している。

同社は2025年3月時点で120万ドル(約1億8,800万円)の資金調達を実施しており、今回のLAB7による出資を通じて生産プロセスの洗練と事業規模の拡大を図り、市場投入への準備を整える。

世界的な電動化の進展に伴い、リチウムイオン電池の主要構成要素である黒鉛の需要は急増しているが、その供給網は特定の地域に依存しており、環境負荷の低い製造手法の確立が急務となっていた。ホメオスタシスの技術は、CO2の回収と重要資材の生産を直結させることで、排出物を「廃棄物」ではなく「資源」として再定義し、サーキュラー・カーボン・エコノミーの実現に寄与する。

ホメオスタシスの共同創業者兼最高経営責任者(CEO)であるマコト・エア氏は「ラブセブンによる支援を歓迎する。成長を続ける黒鉛市場において、世界中で稼働するCO2回収資産から黒鉛を製造する能力を提供していく」と述べた。

また、同社の共同創業者兼最高科学責任者(CSO)のジュリアン・ロンバルディ博士は「本提携は、廃棄物ストリームを広く利用可能な原料へと変えることで、エネルギーインフラを強化する重要な一歩だ」と指摘した。

アラムコはLAB7を通じて、革新的な技術を持つスタートアップに対し市場へのアクセスや技術開発の加速を支援している。今回の投資は、石油・ガス産業の脱炭素化を推進するだけでなく、電池素材の持続可能性と供給網の強靭化を同時に追求する業界全体の潮流を反映したものだ。

今後の焦点は、ホメオスタシスが予定しているパイロットプロジェクトの展開と、アラムコの持つ広大な産業プラントへの実装時期に移る。両社は今後、数カ月以内に具体的な実証スケジュールの詳細を明らかにする見通しだ。

世界最大の石油会社アラムコが、ベンチャー部門を通じて「CO2を電池素材に変える」技術へ投資したことは、化石燃料企業がCDRやCCUを単なるコストではなく、成長産業であるEVサプライチェーンに組み込む戦略を明確にしたことを意味します。

特に中国が供給網の大部分を握る黒鉛において、排出ガスから自国内で合成黒鉛を「製造」できる技術は、経済安全保障の観点からも日本の事業者にとって極めて重要なベンチマークとなるでしょう。

参考:https://lab7.com.sa/news/lab7-backs-homeostasis-advance-co2-conversion-synthetic-graphite