アジア太平洋が世界の炭素除去市場の次なる主戦場に
Carbon Business Council(CO2BC)とEmerald Climateは2026年2月25日、アジア太平洋地域における炭素除去(CDR)の責任ある拡大を目的とした地域イニシアティブ「APACdr(Asia-Pacific Carbon Dioxide Removal)」の立ち上げを発表した。
アジア太平洋は世界人口の60%超を擁し、世界の温室効果ガス(GHG)排出量の約半分を占める。この地域の動向が、今後の炭素除去(CDR)の将来像を大きく左右するとの認識が、本イニシアティブの出発点となっている。
同地域では技術力・金融専門性・プロジェクト開発能力の拡充が進んでいるが、次段階への移行には、需要シグナルの調整・規制の明確化・機関投資家による採択が不可欠と両者は指摘する。
シンガポール拠点の作業部会、26組織が参画した発足セッション
APACdrはシンガポールを拠点とする作業部会として設立され、政策立案者・金融機関・コーポレートバイヤー・プロジェクト開発者・市民社会のリーダーを一堂に集め、炭素除去(CDR)のスケールアップに向けた実践的な道筋を共同で模索する。
2026年1月に開催された発足セッションには、金融機関・多国籍企業・カーボンプロジェクト開発者・カーボンクレジットレーティング機関・非営利組織など26の組織が参加し、地域横断的な関与と分野を超えた協力体制を示した。
2026年の重点課題、市場インフラの構築と制度設計
2026年を通じてAPACdrが取り組む主要テーマは以下のとおりである。
- ポートフォリオ型調達モデルの設計
- 混合価格メカニズム(ブレンドプライシング) の策定
- 需要集約アプローチの構築
- グローバルカーボンクレジット市場との統合
- 地域ステークホルダーへの炭素除去(CDR)教育
エコスペリティウィークにAPACdrサミットを開催予定
APACdrは今後、地域版カーボンリムーバル政策入門書(Carbon Removal Policy Primer) の策定と、定期的な作業部会セッションの実施を予定している。
さらに2026年5月18〜21日に開催されるエコスペリティウィーク期間中、「APACdrサミット」を主催する予定。政策設計・金融手段・調達フレームワークを中心に、高い完全性を持つ炭素除去(CDR)の地域的スケールアップに向けた議論が行われる。
作業部会を率いるのは、Carbon Business Council事務局長のBen RubinとEmerald Climate創業者のPauline Wrayの両名。WrayはClimate・Financeを横断するベンチャーにおいて20年超の起業・戦略・アドバイザリー経験を有する。
APACdrの発足は、GX-ETSの本格稼働と炭素除去(CDR)クレジットへの関心が高まる日本にとって無視できない動きだ。
シンガポールを拠点とする本作業部会が需要集約モデルやカーボンクレジット市場との統合を議題に据えている点は、調達戦略の策定を急ぐ日本の大手産業企業にとって実務的な示唆を含む。
カーボンクレジットレーティング機関が初回から参画している事実は、品質基準への市場の目が厳しくなっている証左でもあり、日本企業はプレパーチェスカーボンクレジットの選定において追加性・永続性の精査をさらに強化する必要がある。
参考:https://www.carbonbusinesscouncil.org/news/apacdr-working-group?trk=public_post_comment-text
