サウジVCMとスイスAltitude Capitalが戦略提携 「グローバルサウスで高品質CDRを拡大」

村山 大翔

村山 大翔

「サウジVCMとスイスAltitude Capitalが戦略提携 「グローバルサウスで高品質CDRを拡大」」のアイキャッチ画像

サウジアラビアのボランタリー・カーボン・マーケット・カンパニー(VCM)とスイス拠点の炭素除去ファイナンス企業アルティチュード(Altitude Capital Partners)は11月4日、グローバルサウス諸国における高品質な二酸化炭素除去(CDR)プロジェクトの拡大に向けた戦略的パートナーシップを発表した。両社は、認証済みのCDR事業を共同で推進し、世界的なネットゼロ目標の達成に寄与することを目指す。

スイスのアルティチュードは、CDR分野に特化した投資ファンドとして知られ、今回の提携では主にアフリカや東南アジアなどのグローバルサウス地域で展開される除去プロジェクトを対象とする。これらの事業は、国際的に認められた手法で検証され、厳格な基準の下でモニタリングされるため、信頼性と透明性の高い除去量を確保するという。

VCMの最高事業開発責任者(CBDO)であるエリック・リングヴォルド氏は、「この提携は高品質CDRの拡大に向けた当社の取り組みを示すものだ」と述べ、「サウジアラビアがカーボン市場の世界的ハブとしての地位を確立するという王国の野心にも貢献する」と強調した。

一方、アルティチュードのマネージング・パートナーであるダニエル・ベンジャミン・シュルツ氏は、「VCMと連携し、大規模で検証可能なCDRを実現できることを誇りに思う。この合意はCDRの次のフェーズが持つ可能性を示すものだ」と述べた。

アルティチュードは、自社の目標として「数百万トン規模のCDRを促進する」ことを掲げており、2025年9月にはCDRファイナンスプログラム「Ascent 1」の調達量を当初の5万トンから25万トンに大幅拡大すると発表している。

同社はまた、西アフリカのバイオ炭施設から新たに12万トン分の炭素除去証書(CORC)を確保しており、これはすでに契約済みの2万5,000トンに上乗せされる。これらのCORCは、フィンランドのプーロ・レジストリ(Puro Registry)が発行するデジタル取引可能なカーボンクレジットで、1枚あたり大気中のCO2を1トン除去したことを示す。

さらにアルティチュードは、東南アジア地域のバイオ炭施設から5万トン超のCORCを調達する契約も締結しており、地域横断的なCDR供給基盤を急速に拡大している。

今回のVCMとの提携により、アルティチュードはグローバルサウスにおける高信頼性CDRの創出を一層加速させる構えだ。VCMにとっても、自国サウジアラビアの炭素市場戦略を具体化する一手となる。両社は今後、国際的な買い手に対して「高品質かつトレーサブルなCDRクレジット」を提供していく方針である。

参考:https://www.altitudecarbon.com/news/vcm-and-altitude-partner-on-large-scale-carbon-dioxide-removals