CDR(炭素除去)技術を開発するディープテック企業Alt Carbonは、5月21日、南アジアにおけるERW(岩石風化促進)の展開加速に向け、約12億円(1,200万ドル)のシード資金を調達したと発表した。主導したのはLachy Groom氏で、既存投資家のほか複数の著名エンジェル投資家が参加した。
本資金調達により、Alt Carbonはインドを中心とする地球科学の研究開発と気候アクションのための農業インフラ構築を進める。最終的には2030年までに500万トンのCO2除去を目指す。
Alt Carbonは、火山岩である玄武岩の粉塵を農地に散布し、雨水との反応によって大気中のCO2を安定した炭酸水素塩として土壌に固定化するERW技術を活用している。この化学反応により生成されたイオンは川を経て海洋に到達し、1万年以上にわたり炭素を封じ込めることができるとされる。
この手法は、土壌の肥沃化や農作物の収量向上にも寄与することから、気候変動対策と地域経済の活性化を両立するアプローチとして注目されている。
直近では、三菱商事やMOLグループとのパートナーシップが発表され、日印間の脱炭素ビジネス回廊の形成が進行中である。三菱商事との提携は、南アジアにおけるERWの大規模展開を支援するものであり、MOLグループとは1万トン分のカーボンクレジット購入契約が締結された。
さらに、Alt Carbonは、Stripe、Meta、Alphabetなどが支援する「Frontier」からインド発の初のCDRプロバイダーとして選出され、South Poleと三菱主導のNextGenともオフテイク契約を結んでいる。
旗艦プロジェクトである「ダージリン復興プロジェクト(DRP)」では、気候変動の影響を受けた紅茶農園の再生と、CO2除去の両立を目指している。ERWの導入により、現地農家の収益向上、雇用創出、生態系の回復を図る取り組みだ。
Alt Carbonの共同創業者でCEOのShrey Agarwal氏は、「科学的根拠に基づく気候アクションをグローバル南から実行に移すことが、持続可能な脱炭素社会の鍵になる」と語っている。
参考:https://www.linkedin.com/posts/alt-carbon_activity-7331175014072754178-1jTj
参考:https://www.alt-carbon.com/press-releases/alt-carbon-raises-12-million-seed-round-to-scale-carbon-removal-(cdr)-in-the-global-south