米国の気候変動対策予算がトランプ政権下で削減される中、民間投資家が炭素除去(CDR)を含むクライメートテック支援に動き出した。コースラ・ベンチャーズ(Khosla Ventures)、ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ(Breakthrough Energy Ventures)、DCVCなど有力ファンドが参画し、「オールアボード連合(All Aboard Coalition)」を立ち上げた。第1号基金は3億ドル(約450億円)の規模で、10月末までに資金を確定させ、年内にも初期投資を実行する予定だ。
連合の参加ファンドは総額400億ドル(約6兆円)以上を運用しており、各自のファンド資金と併せて投資を展開する計画である。
背景には、直接空気回収(DAC)や海洋炭素除去(mCDR)など高コスト・長期型技術への資金流入の急減がある。調査会社ピッチブックによれば、米国のDACスタートアップへの投資は2025年1〜3月期で5,800万ドル(約87億円)にとどまり、前年同期比で6割以上減少した。トランプ政権が助成金を撤回し、研究支援プログラムを凍結したことが主因である。
すでに米海洋炭素除去のランニング・タイド(Running Tide)やDACのノヤ(Noya)が資金難で事業停止に追い込まれたほか、スイスのクライムワークス(Climeworks)も高コストを理由に人員削減に踏み切った。同様の課題はグリーン水素や長期蓄電の分野でも表面化している。
同連合を主導する気候投資家クリス・アンダーソン氏は「低排出経済を築ける企業が資金を得られないことこそ、未来にとって最大の脅威だ。唯一の解決策は集団行動だ」と述べた。
また、著名エネルギー投資家で初期出資者のジョン・アーノルド氏は「規模拡大の課題は一社では解決できない。専門性と資金を結集することで、最有望なクリーンエネルギー企業に次の産業革命を牽引させられる」と指摘した。