アルバータ州、畜産由来のRNG×CCS事業に11億円拠出 世界初の「農業系ネガティブエミッション」実現へ

村山 大翔

村山 大翔

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カナダ・アルバータ州の再生可能エネルギー開発企業であるタウラス・カナダ・リニューアブル・ナチュラル・ガス(Taurus Canada Renewable Natural Gas)は、家畜排泄物からバイオガスを生産し、同時に二酸化炭素(CO2)を回収・貯留する世界初の統合施設の建設に着手する。

同プロジェクトはアルバータ州政府の「技術革新・排出削減(TIER)」プログラムから1,000万カナダドル(約11億円)の助成を獲得した。農業由来のメタン排出回避とCCSを組み合わせることで、カーボンネガティブなエネルギー供給モデルの構築を目指す。

本プロジェクトは、アルバータ州コールデールにおいて、地元の畜産会社であるKCLキャトル・カンパニー(KCL Cattle Company)およびカスコ・キャトル(Kasko Cattle Co.)と共同で展開される。建設される施設では、近隣のフィードロット(肥育場)から排出される年間13万トンの家畜排泄物を嫌気性消化プロセスによって処理し、バイオメタン(RNG)を生産する。

特筆すべきは、このプロセスで発生するバイオジェニックCO2(生物起源のCO2)を回収し、地下に圧入・貯留するCCS機能を統合している点である。これにより、従来の化石燃料由来の天然ガスを代替するだけでなく、大気中の炭素を実質的に削減する「ネガティブエミッション」の実現が可能となる。

今回の資金拠出は、アルバータ州が推進する総額2,800万カナダドル(約30.8億円)規模のTIERプログラムの一環である。同プログラムは、産業部門の排出削減と効率化を目的とした6つの技術プロジェクトを支援しており、タウラス社の事業はその中核と位置づけられている。

アルバータ州政府のグラント・ハンター環境・保護地域大臣は「環境保護とエネルギー生産の両立は、州の産業競争力を数十年にわたって維持するために不可欠である」と述べ、地元主導のイノベーションを強調した。

施設が2028年1月に本格稼働すれば、年間36万ギガジュール(GJ)のRNGを供給する計画である。これは一般家庭約4,500世帯分のエネルギー需要に相当し、化石燃料の代替による排出削減効果は、道路から乗用車3,800台を排除することに匹敵する。

また、副産物として生成される栄養豊富な消化液は、持続可能な有機肥料として地域農業に還元される。本プロジェクトは、重工業に偏りがちだったCCS技術を、分散型の農業セクターへと応用する新たなテンプレートとなることが期待されている。

タウラス社は今夏にも着工を予定しており、分散型バイオエネルギーとCCSの統合モデルが成功すれば、カナダ西部の農村部における脱炭素化の加速は確実である。特に、バイオジェニックCO2の回収・貯留は、カーボンクレジット市場において極めて信頼性の高い「除去系クレジット」としての価値を生む可能性が高い。

本件は、単なる廃棄物処理の枠を超え、農業を「炭素吸収源」へと変貌させる画期的な事例である。日本においても、家畜排泄物の処理は地域課題の一つだが、本モデルのようにCCSを組み合わせることで、地方自治体や中小畜産農家が高付加価値なカーボンクレジットを創出する新たな収益源を確保できる可能性を示唆している。

参考:https://taurusrng.com/taurus-canada-rng-corp-awarded-10m-to-build-worlds-first-integrated-anaerobic-digestion-and-carbon-sequestration-facility-to-produce-renewable-natural-gas-exclusively-from-local-livestock-m/